夕方、まだ少し明るいのに対向車がライトを点けている。逆に、暗くなってもスモールランプだけで走っている車もいる。
「オートライトって義務化されたんじゃないの?」と思ったことはありませんか。
義務化は本当です。ただし、義務化されたのは「クルマに付ける装備」であって、「ドライバーがライトを点ける義務」とは別の話です。この2つは、根拠になる法律からして違います。
そして夜間にスモール位置だけで走ると、必要な前照灯を欠くため、無灯火違反の対象になります。
この記事では、オートライト義務化の中身(いつから・どの車が対象か・何を基準に点くのか)と、スモール走行がなぜ違反になるのかを、国の資料と道路交通法の条文から整理します。
⏱ この記事の要点(30秒)
- オートライト義務化は「新しく作られる対象車に対する装備義務」。ドライバーの点灯義務とは別の制度
- ふつうの乗用車などは新型車が2020年4月、継続生産車が2021年10月から対象。義務化前の車にも付いている場合はあるが、全車ではない
- バイク・原付は、この記事で扱う四輪車向けの照度連動式オートライト義務の対象外(道交法の点灯義務は別にかかる)
- 周囲が1,000ルクス未満になると2秒以内に自動点灯。手動で解除できないと定められているのは「点く側」
- スモール位置では前照灯が点かない。夜間にそれだけで走れば無灯火。普通車で反則金6,000円・1点
- 保安基準上のデイライトは任意の装備で、前照灯ではない

オートライト義務化とは、何が義務になったのか
根拠は道路運送車両の保安基準という、車の構造・装備に関する国の安全基準です。2016年10月7日に改正され、次の基準が加わりました。
すれ違い用前照灯(ロービーム)について…周囲の明るさ(照度)に応じ、自動的に点灯及び消灯する機能を有さなければならない
(国土交通省「道路運送車両の保安基準等の一部を改正する省令等について」別紙)
「すれ違い用前照灯」は、いわゆるロービームのことです。
ここで大事なのは、これが新しく作られ、販売される車に課される装備基準だということ。「基準に適合した車を作って売りなさい」というルールであって、運転中のドライバーに「ライトを点けなさい」と命じたものではありません。
この違いが、記事の後半で効いてきます。

点灯・消灯の基準は、数値で決まっている
「なんとなく暗くなったら点く」のではなく、周囲の明るさの数値で決まっています。
| 周囲の明るさ | ロービーム | 反応の速さ |
|---|---|---|
| 1,000ルクス未満 | 点灯する | 2秒以内 |
| 1,000〜7,000ルクス | メーカーの判断にまかせる | — |
| 7,000ルクス超 | 消灯する | 5秒より後〜300秒以内 |
※ハイビームまたはフォグランプを点灯している場合、駐停車状態などは、この作動要件から除かれます。
ルクスは明るさを表す単位です。1,000ルクスが実際に何時ごろ訪れるかは、天候・季節・周囲の建物・センサーの取付位置などで大きく変わります。そのため、日没前でも曇りや高架下で自動点灯することがあります。「まだ明るいのに点いた」と感じるのは、このためです。
消灯のほうに「5秒より後」という下限があるのは、トンネルの照明や街灯を一瞬横切っただけでチカチカ消えたりしないようにするためです。
「オートライトは消せない」は、半分だけ正しい
よく「最近の車はライトをオフにできない」と言われます。資料の書き方は、もう少し限定的です。
このうち、自動点灯に係る機能については、手動による解除ができないものでなければならない
手動での解除を禁じると明記されているのは、自動で点く機能についてです。自動で消える側は、この文言に含まれていません。ただし、具体的にどの操作ができるかは車種ごとの設計によります。
さらに、次の場合は作動要件から外れます。
走行用前照灯又は前部霧灯を点灯している場合及び自動車が駐停車状態にある場合等を除く
ハイビームやフォグランプを点けているとき、そして停まっているときです(ハイビームとロービームの切替義務は別記事で扱っています)。このため、駐停車中の灯火の動きは走行中とは異なる制御にできる余地があります。
ただし、ここは誤解しやすいところです。この「除外」は、オートライトという装置に求められる作動条件から外れるという意味であって、夜間の道路上で停車・駐車するときに消灯してよい、という交通ルール上の免除ではありません。 道路交通法の点灯義務は、これとは別に判断されます(駐車と停車の違いも参考にしてください)。
いつから義務? 自分の車は対象か
適用の時期は、車の種類と「新型車か、継続生産車か」で分かれます。
| 車の種類 | 新型車 | 継続生産車 |
|---|---|---|
| 定員11人以上の乗用車/車両総重量3.5tを超える貨物車 | 2021年4月 | 2023年10月 |
| 上記以外(ふつうの乗用車・軽自動車など) | 2020年4月 | 2021年10月 |
- 新型車=その時期以降に新しく設計されて発売されたモデル
- 継続生産車=改正前から販売が続いていた既存モデル
ここが一番の勘違いポイントです。
これは、義務化より前に発売された車へ、後からさかのぼって装着を求める制度ではありません。ただし、義務化より前の車にも、メーカーが任意でオートライトを付けている場合はあります。 逆に、付いていない車も現在なお走っています。
つまり「義務化されたんだから、みんな自動で点くはず」でもなければ、「古い車には絶対に付いていない」でもありません。
自分の車が対象かどうかは、車検証の初度登録年月だけでは判断できない場合があります。取扱説明書を見るか、実車のライトスイッチに「AUTO」の位置があるかを確認するのが確実です。
なお、バイク・原付は、この記事で扱う四輪車向けの照度連動式オートライト義務の対象外です。基準の適用範囲から、二輪自動車・側車付二輪自動車・三輪自動車などが除かれています。ただし、道路交通法上の夜間の点灯義務は別にかかります。

スモールだけで走ると、なぜ違反なのか
ここからは道路交通法の話です。根拠が変わります。
道路交通法52条1項は、こう定めています。
車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない
そして、具体的に何を点けるかは道路交通法施行令18条が決めています。自動車の場合は「前照灯、車幅灯、尾灯、番号灯」です。
ここで、一般に「スモール」と呼ばれるスイッチ位置を考えてみます。
この位置では、車幅灯・尾灯・番号灯などは点灯します。 車の後ろは赤く光り、ナンバーも照らされます。外から見て「真っ暗」ではありません。
しかし、前照灯(ヘッドライト)は点きません。
夜間の自動車には前照灯も必要です。ですからスモール位置だけで走れば、必要な灯火をすべて点けていない状態となり、無灯火違反の対象になります。
「夜間」の定義も条文にあります。「日没時から日出時まで」であって、「暗いと感じたら」ではありません。日没の時刻を過ぎていれば、体感的にまだ明るくても点灯義務は発生しています。

昼でも点けなければならない場合
夜でなくても点灯が必要な場面が、施行令19条に定められています。
トンネルの中や濃霧の場所などで、見通せる距離が高速道路・自動車専用道路では200メートル以下、その他の道路では50メートル以下になるような暗い場所です。豪雨や吹雪で視界が悪いときも当てはまります。
条文は、その場所を通行するときだけでなく、その場所に停車・駐車しているときも対象にしています。ここは意外と知られていません。
罰則はどうなるか
無灯火の罰則は、道路交通法52条1項の罰則として120条1項5号が定められており、条文上は5万円以下の罰金です。
ただし実際には、多くが交通反則通告制度(青切符)で処理されます。
| 無灯火 | |
|---|---|
| 違反点数 | 1点 |
| 大型車の反則金 | 7,000円 |
| 普通車の反則金 | 6,000円 |
| 二輪車の反則金 | 6,000円 |
| 小型特殊車・原付の反則金 | 5,000円 |
(警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」「交通違反の点数一覧表」)
反則金は、交通反則通告制度に基づいて納める金銭で、刑事罰である罰金とは別のものです。 所定の手続で反則金を納付すれば、その反則行為について刑事手続には進みません。未納の場合も、自動的に同額の罰金へ変わるわけではなく、刑事手続へ移る可能性がある、という関係です。
「オートライト車だから大丈夫」とは限らない
装備の義務と点灯の義務が別だとわかると、こういうことが見えてきます。
オートライトが付いていても、点灯義務の判断は別に行われます。
たとえばフォグランプです。オートライトの装置基準では、フォグランプを点灯している場合が作動要件から除かれています。しかしこれは、フォグランプだけで夜間走行してよいという意味ではありません。 道路交通法上は前照灯が必要なので、フォグだけを点けて前照灯を点けなければ、必要な灯火を満たしていないことになります。
そして何より、義務化の対象外である車では、そもそも自動で点きません。
逆に、オートライトが付いていない車でも、日没前に自分でスイッチを回していれば、何の問題もありません。
点灯義務を果たすのは、最終的にはドライバーです。 装備はそれを助ける仕組みにすぎません。
デイライトが点いていれば大丈夫、ではない
最近は昼間から前まわりが光っている車が増えました。あれはデイライト(昼間走行灯)で、ヘッドライトとは別の灯火です。
じつはデイライトも、オートライトとまったく同じ2016年10月の改正で基準が定められました。ただし、条文の書き方が決定的に違います。
| 資料の言い方 | 意味 | |
|---|---|---|
| オートライト | 「有さなければならない」 | 義務(適合しないと売れない) |
| デイライト | 「備えることができる」 | 任意(付けても付けなくてもよい) |
保安基準上の昼間走行灯(デイライト)は、前照灯とは別の灯火です。つまり、夜間にデイライトだけが光っている状態は、施行令18条が求める前照灯を欠いています。
デイライトは自分の存在を昼間に知らせるためのもので、夜の点灯義務を肩代わりするものではないと考えてください。
なお、市販品には俗に「デイライト」と呼ばれていても、実際には車幅灯やアクセサリー灯を明るくしただけの製品もあります。保安基準上の昼間走行灯とは別物です。

無灯火の車を見かけたら
日没後にスモール位置だけで走っている車は、実際によく見かけます。本人が気づいていないことがほとんどです。
対向車として気づいたとき、パッシングで知らせるという方法が語られることがあります。ただしパッシングは意図が伝わるとは限らず、状況によっては挑発と受け取られます。
そして、当サイトが繰り返しお伝えしていることですが——
相手が違反していることは、車間を詰めたり、進路をふさいだり、わざと急ブレーキを踏んだりしてよい理由にはなりません。 妨害運転罪が成立するかどうかは、「相手が悪かったか」では変わりません。相手の無灯火は相手の責任、こちらの妨害運転はこちらの責任です。
危険な走行を見かけた場合は、記録を残したうえで警察に情報提供するのが確実です。あおり運転がどんなきっかけで始まるのかはこちらの記事で解説しています。
まとめ
- オートライト義務化の根拠は保安基準。新しく作られる対象車への装備義務であって、ドライバーの点灯義務とは別の制度
- 基準は数値で決まっている。1,000ルクス未満で2秒以内に点灯/7,000ルクス超で消灯(ハイビーム・フォグ点灯中、駐停車状態などは除く)
- 手動解除の禁止が明記されているのは自動で「点く」機能について。駐停車状態が作動要件から外れることは、交通ルール上の消灯許可ではない
- 適用は新型車2020年4月・継続生産車2021年10月(大型・重量貨物は2021年4月/2023年10月)。義務化前の車にも付いている場合はあるが、全車ではない
- バイク・原付は、四輪車向けの照度連動式オートライト義務の対象外(道交法の点灯義務は別にかかる)
- 夜間(日没時から日出時)は前照灯・車幅灯・尾灯・番号灯が必要。スモール位置では前照灯が点かないので無灯火
- 無灯火は1点・普通車で反則金6,000円(条文上の罰則は5万円以下の罰金)
「オートライトが義務化されたから安心」ではありません。自分の車のライトスイッチに「AUTO」があるかを一度確認しておくことが、いちばん確実です。
—
あわせて読みたい(知らないと違反しやすいルール)
出典
- 国土交通省「道路運送車両の保安基準等の一部を改正する省令等について」別紙(2016年10月7日)PDF
- 道路交通法(e-Gov法令検索)/道路交通法施行令
- 警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」「交通違反の点数一覧表」
