妨害運転罪(法律)

パッシングは違反になる?あおり運転(妨害運転罪)になる境界|クラクションとの違いも解説

導入

いま「パッシング」への関心が高まっています。きっかけは、都営バスの運転手が一般車両に不必要なクラクションやパッシングを繰り返したとして、あおり運転(妨害運転)の疑いで書類送検されていたと報じられたことです。

「パッシングって違反なの?」「お礼や合図で使うこともあるのに?」——そう感じた人は多いはずです。この記事では、①報道されている事案の概要、②パッシングが違反になる場合・ならない場合、③クラクションとの規制の違い、④免許取り消しと書類送検の意味——を、道路交通法の条文に沿って整理します。

報道されている事案の概要(2026年9月12日時点)

路線バスが乗用車のすぐ後ろに接近して走る様子を上空から見たイラスト

各社の報道によれば、概要は次のとおりです。

  • 2025年10月、東京・文京区の不忍通りからJR駒込駅までの間で、回送中の都営バスの運転手が、前方の一般車両に対して不必要にクラクションやパッシングを繰り返すなどのあおり運転をした疑いが持たれている
  • ドライブレコーダーには「バカヤロー」という声が残っていたと報じられている
  • 被害を受けた車両の運転者からの110番通報で発覚した
  • 運転手は2026年に運転免許取り消しの行政処分を受けたこと、道路交通法違反(妨害運転)の疑いで書類送検されていたことが、2026年9月11日に報じられた
  • 警視庁は、運転手の認否を明らかにしていないと報じられている

書類送検は「有罪が確定した」という意味ではありません(後述)。この記事は事件の詳報ではなく、同じ場面の法律関係を条文から理解するための整理です。

パッシングはいつ違反になる?——「行為そのもの」ではなく「状況と使い方」で決まる

パッシング自体を一律に禁止する条文はない

意外に思われるかもしれませんが、道路交通法に「パッシング禁止」という条文はありません。パッシングは、進路を譲る意思を示すなど、ドライバー間の合図として使われることがあります。ただし、こうした使い方は道路交通法で定められた正式な合図ではなく、意味も状況によって異なります。

「減光等義務」(52条2項)が問題になるのは、原則として夜間

道路交通法52条2項は、夜間、他の車両と行き違う場合や他の車両の直後を進行する場合に、相手の交通を妨げるおそれがあるときは、灯火を消す・光度を減ずるなどの操作をしなければならないと定めています(減光等義務)。

つまり、パッシングをしただけで直ちに52条2項違反になるわけではありません。一方、夜間に前車の直後からハイビームを照射し続けたり、相手の運転を妨げるような灯火の使い方をした場合には、減光等義務違反が問題になる可能性があります。

妨害目的なら「妨害運転罪(あおり運転)」に発展し得る

ここが本題です。妨害運転罪(道路交通法117条の2の2第1項8号)は、対象となる違反行為を条文で列挙しており、その中に減光等義務違反が含まれています。

他の車両等の通行を妨害する目的で、こうした違反行為を、道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行った場合には、妨害運転罪が成立する可能性があります。罰則は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、高速道路上で相手を停車させるなど著しい交通の危険を生じさせた場合は加重され(同法117条の2第1項4号)、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

「お礼や合図としてのパッシング」と「あおり運転として問題になる灯火操作」は、妨害目的の有無、道路状況、相手との距離、行為の態様や危険性などによって法的評価が変わる、ということです。

※条文の号記号について: 現行法では減光等義務違反は117条の2の2第1項8号ト、警音器使用制限違反(後述)は同号チに位置付けられています。今回報道された行為は2025年10月で、2026年4月の改正で、道路交通法18条3項の通行方法違反(自動車等が自転車等の右側を通過する際の義務)が妨害運転の対象類型に追加され、号記号が繰り下がる前だったため、当時の号記号はそれぞれヘ・トでした。また、報道では具体的な適用類型の内訳までは明らかになっていないため、この記事では一般論として現行法を説明しています。

パッシングとクラクションは何が違う?

運転席でハンドル中央のクラクションに手を伸ばすイラスト

クラクションは、パッシングとは規制の仕組みが異なります。道路交通法54条2項は、法令上鳴らすべきとされている場合を除き、原則として警音器を鳴らしてはならないと定め、危険防止のためやむを得ないときを例外としています。パッシングのような「そもそも禁止規定がない」行為とは違い、クラクションは原則制限つきの行為です。クラクションを鳴らしてよい場面・違反になる場面の詳細は、クラクションの解説記事で整理しています。

そして、この警音器使用制限違反も、他車の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行われた場合には、妨害運転罪の基礎となる違反類型の一つです。威嚇目的でクラクションを繰り返し鳴らす行為は、単なるマナー違反では済まない可能性があります。

つまり2つの行為は、単体の規制構造は違うものの、「妨害目的+危険を生じさせるおそれのある方法」なら妨害運転罪になり得るという上位構造を共有しています。

免許取り消しについて——妨害運転は「その行為だけで」取消しの対象

机の上の法律書と天秤のイラスト

警察庁は、妨害運転をした者は当該行為のみで運転免許の取消処分の対象になると明示しています。累積点数を待たず、悪質・危険な運転者を早期に道路交通から排除する運用です。

今回の事案でも、報道によれば運転手は免許取り消しの行政処分を受けています。刑事手続(送致→検察官の判断)と行政処分(免許取消し)は別のレールで進む、という関係も、この事案の分かりやすいポイントです。

書類送検とは——「有罪確定」ではない

「書類送検」は法律上の正式な用語ではなく、警察が捜査した事件の書類や証拠を検察官に送る「送致」を、報道などで表現する際に使われる言葉です。身柄を拘束していない在宅事件について使われることが多いものの、「書類送検」という言葉だけから逮捕の有無まで断定するのは適切ではありません。

重要なのは、書類送検の段階では起訴・不起訴も、有罪・無罪も決まっていないという点です。起訴するかどうかを判断するのは検察官です。報道を読むときは、「容疑の段階なのか」「起訴されたのか」「判決が出たのか」を区別して受け取ることが大切です。

パッシングやクラクションで威嚇されたら

夜のサービスエリアに停まる乗用車のイラスト

報道を見て「自分がやられたらどうすればいいのか」と不安になった人のために、原則を整理します。

  1. 応戦しない: クラクションやパッシングで応酬すると、状況をさらに危険にするだけでなく、自分側の運転行為についても違反の有無を問題にされる可能性があります
  2. 安全に可能なら距離を取る: 無理な車線変更や急停車はせず、安全に可能な範囲で相手との距離を確保する
  3. 安全な場所へ避難して110番する: サービスエリアやパーキングエリアなど、交通事故に遭わない安全な場所へ避難し、原則として車外に出ずに110番します。今回の事案も、被害車両の運転者の110番通報が発覚のきっかけと報じられています
  4. 記録を残す: ドライブレコーダーの映像・音声は、警察による事実確認や捜査の資料になり得ます(今回の事案でも音声が残っていたと報じられています)

当サイトの立場

当サイトが一貫して言い続けていることは一つです。相手の違反は、自分の違反を正当化しない

仮に前方の車の走り方に問題があったとしても、パッシングやクラクションで「制裁」してよいことには一切なりません。合図の道具を威嚇の道具に持ち替えた瞬間、法的評価は変わり得ます。距離を取り、安全を確保し、記録を残して警察に委ねる——これが基本的な対応です。

まとめ

フロントガラスに取り付けられたドライブレコーダーのイラスト
  • パッシング自体を一律に禁止する規定はない
  • ただし、夜間に前車の直後などで相手の交通を妨げるおそれのある灯火操作をすれば、減光等義務違反(52条2項)が問題になり得る
  • クラクションは54条2項により、法令上必要な場合等を除き原則として使用が制限されている
  • これら一定の違反行為を、他車の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行えば妨害運転罪になり得る(その行為だけで免許取消処分の対象)
  • 今回の都営バス事案は書類送検の段階であり、有罪が確定したものではない

関連記事

出典

オトロン

ローン審査に不安があるなら、
まずは「今の自分がどこまで通るのか」を知ることが第一歩です。

仮審査は1分、結果は最短15分。
今の状況を無料でチェックしておきたい方は、以下から申込できます。


【1分で完了】オトロンの無料仮審査に進む

※仮審査は無料です。
※信用情報機関(いわゆるブラックリスト)には一切記録されません。