導入
2026年4月1日から、自転車の交通違反に青切符(交通反則通告制度)の運用が始まりました。「自転車でも罰金を取られるようになった」「信号無視で6,000円」といった断片的な情報が広まる一方で、誰が対象なのか、いくらなのか、そもそも今までと何が違うのかを正確に説明できる人は多くありません。
この記事では、①青切符とはどういう仕組みか、②対象者と反則金の一覧、③「いきなり切符」ではない運用の実際、④青切符にならない重大なケース——を、道路交通法・施行令の条文と警察庁の公式資料をもとに整理します。
青切符とは何か——反則金を納めれば刑事手続に進まない仕組み

青切符の正式名称は交通反則通告制度です。自動車の世界では半世紀以上運用されてきた仕組みで、比較的軽い交通違反について、反則金を納付すれば刑事手続に進まず、手続が終了するというものです。
ここが重要なポイントです。交通違反は本来、道路交通法違反という「犯罪」であり、刑事手続に進めば罰金刑=前科になり得ます。改正前の自転車の取り締まりは、この刑事手続(いわゆる赤切符)しか手段がなく、手続の負担が大きい割に、多くは起訴に至らないという実情がありました。青切符の導入により、警察庁の資料でも「違反者に前科がつくことをなくしつつ、実効性のある責任追及が可能となる」と説明されています。
つまり青切符は「罰則の新設」というより、自動車と同じ、軽い違反のための出口が自転車にも用意された、という制度変更です。
いつから・誰が対象か

- 開始: 2026年4月1日
- 対象: 16歳以上の自転車運転者による、法令で定められた「反則行為」
16歳という線引きは法律に明記されています。道路交通法125条2項は「反則者」から16歳未満の者を除外しており(同項4号)、16歳未満には青切符は切られません。従来どおり指導が中心です。
なお、対象になるのは電動アシスト自転車を含む普通の自転車です。スロットルで走行できるものなど、電動アシスト自転車の基準に適合しない車両は、自転車ではなく一般原動機付自転車や自動車として扱われる場合があります。
主な反則金——自転車は「原付等」の金額が適用される
反則金の額は道路交通法施行令(45条・別表第六)で定められています。条文上、自転車は車両区分「原付等」(小型特殊自動車・原動機付自転車及び軽車両)に含まれ、その金額が適用されます。主な違反は次のとおりです。
| 違反 | 反則金 |
|---|---|
| 信号無視(赤色等) | 6,000円 |
| 通行区分違反(右側通行・車道の逆走など) | 6,000円 |
| 遮断踏切立入り | 7,000円 |
| 携帯電話使用等(保持)=いわゆる「ながらスマホ」 | 12,000円 |
| 指定場所一時不停止等 | 5,000円 |
| 信号無視(点滅) | 5,000円 |
| 通行禁止違反 | 5,000円 |
| 徐行場所違反 | 5,000円 |
| 無灯火 | 5,000円 |
| 制動装置不良(ブレーキ不良の自転車) | 5,000円 |
| 傘さし運転など(公安委員会遵守事項違反・都道府県規則による) | 5,000円 |
| 歩道徐行等義務違反 | 3,000円 |
| 並進禁止違反 | 3,000円 |
表は主な違反の抜粋で、このほか速度超過(区分により6,000〜12,000円)などもあります。自転車の反則金は最大12,000円で、掲載した中では「ながらスマホ(保持)」がこれに当たります。なお、スマホを見ながら運転して実際に交通の危険を生じさせた場合は、青切符ではなく刑事手続の対象になります。
「いきなり切符を切られる」わけではない——運用の核心

ここがこの制度で最も誤解されている部分です。警察庁は、自転車の指導取り締まりの基本的な考え方を青切符の導入前後で変えていません。
- 交通違反に対しては基本的に「指導警告」を実施
- 交通事故の原因となるような「悪質・危険な違反」が検挙の対象
つまり、違反を見つければ一律に青切符を交付する運用ではありません。基本は指導警告ですが、携帯電話使用(保持)・遮断踏切立入り・ブレーキ不良など違反自体の危険性が高いものや、警察官が現認する中での信号無視のような危険な態様の違反は、警告を経ずに検挙されることもあります。この従来の枠組みのまま、検挙後の手続だけが刑事手続から青切符に変わったのが実際です。
なお警察庁の資料によれば、信号無視と指定場所一時不停止等で、令和6年中の自転車の交通違反検挙の8割以上を占めています。取り締まりの重点がどこにあるかは、この数字がそのまま示しています。
青切符にならないケース——重大な違反は今までどおり刑事手続

青切符で処理されないケースには、大きく分けて、そもそも反則行為ではない重大な違反と、反則行為であっても反則者から除外されるケースがあります。
重大な違反・事故は刑事手続
- 酒酔い運転・酒気帯び運転(血中0.3mg/ml または呼気中0.15mg/l 以上)
- 妨害運転(いわゆるあおり運転。自転車にも適用されます)
- 携帯電話使用等(交通の危険)——ながらスマホで実際に交通の危険を生じさせた場合
- 反則行為によって交通事故を起こした場合——道路交通法125条2項3号は「当該反則行為をし、よつて交通事故を起こした者」を反則者から除外しており、その違反は青切符ではなく刑事手続で処理されます
1〜3は反則行為に該当しない重大違反として、従来どおり刑事手続(前科があり得る処理)で扱われます。「青切符ができたから軽くなった」わけではなく、重大な違反への構えはむしろ従来どおり厳しい、という二層構造です。
16歳未満は青切符の対象外
16歳未満は道路交通法125条2項4号により「反則者」から除外されています。そのため青切符は適用されず、警察庁は個別の事案の実情に応じて処理するとしています。通常の違反では指導警告が基本であり、「16歳未満は刑事手続になる」わけではありません。自転車の妨害運転については妨害運転罪の解説記事、事故時の対応は通報されたらどうなるかの記事もあわせてどうぞ。
反則金を納付するとどうなるか・しないとどうなるか
青切符(告知書)を受け取り、反則金を納付すれば手続はそこで終了します。刑事裁判にはならず、前科もつきません。反則金は罰金と違い、刑罰ではありません。
納付しない場合は、本来の原則に戻って刑事手続で処理され得ます。「払わなければ済む」制度ではない点は、自動車の青切符と同じです。
よくある誤解の整理
- 「ヘルメットをかぶっていないと切符を切られる」→ 誤り。ヘルメットは努力義務で、罰則も反則金もありません。詳しくは自転車ヘルメットは義務?の記事で条文から解説しています
- 「自転車に違反点数がつく」→ 誤り。免許制度と紐づく点数制度は自転車にはありません(ただし危険行為を繰り返すと自転車運転者講習の対象になります)
- 「イヤホン・傘は全国一律で違反」→ 都道府県の規則によります。公安委員会遵守事項として定められている場合に反則行為となります
2026年改正の全体像(生活道路30km/h など青切符以外の変更点)は、2026年道路交通法改正のまとめ記事で整理しています。
まとめ

- 青切符=交通反則通告制度。反則金を納めれば刑事手続に進まない「軽い違反のための出口」が自転車にも導入された(2026年4月1日〜)
- 対象は16歳以上(道路交通法125条2項4号)。反則金は施行令別表第六の「原付等」の金額——信号無視6,000円・一時不停止5,000円・ながらスマホ(保持)12,000円など
- 運用は「基本は指導警告・悪質危険な違反を検挙」のまま。検挙後の手続が変わったのが本質
- 酒酔い・酒気帯び・妨害運転・危険を生じさせたながらスマホ・違反によって事故を起こした場合は刑事手続。16歳未満は対象外(指導警告が基本)
- ヘルメット(努力義務)は対象外。違反点数の制度も自転車にはない
出典
- 道路交通法(e-Gov 法令検索・125条ほか) https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105
- 道路交通法施行令(e-Gov 法令検索・45条・別表第六) https://laws.e-gov.go.jp/law/335CO0000000270
- 警察庁「自転車を安全・安心に利用するために—自転車への交通反則通告制度(青切符)の導入—」(自転車ルールブック) https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/pdf/rulebook.pdf
- 警察庁「自転車はルールを守って安全運転」 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/index.html






