子どもを乗せて運転する人が最初に調べるのが、「チャイルドシートって何歳まで?」です。
答えは6歳未満。ここまではどの記事にも書いてあります。
ただ、条文を読むと、そこに例外が仕込まれています。6歳未満でも、大人用のシートベルトを適切に使える座高があれば、チャイルドシートの対象から外れます。「6歳未満なら体格に関係なく必ず必要」ではありません。
もうひとつ。チャイルドシートを使わなくても、罰金も反則金もありません。道路交通法に、この義務違反を処罰する規定が置かれていないからです。それでも違反は違反で、点数は1点つきます。
そして、政令には使わなくてよい場合が8つ定められています。タクシーに乗せるとき、全員ぶんを付けると全員が乗れないとき、授乳しているとき。
この記事では、年齢と体格の関係、罰則の実態、免除の中身を、条文から整理します。
まず結論
| 論点 | 答え |
|---|---|
| 対象 | 6歳未満の「幼児」(道路交通法14条3項) |
| 根拠 | 道路交通法71条の3第3項 |
| 例外 | 6歳未満でも、適切にシートベルトを装着させるに足りる座高があれば対象から外れる(71条の3第2項) |
| 罰金・反則金 | なし。罰則規定が置かれていない |
| 違反点数 | 1点(幼児用補助装置使用義務違反) |
| 免除 | 政令に8つ(施行令26条の3の2第3項)+法律本体に「疾病」の例外 |
| 何cmから対象外か | 法令に数値基準はない。140cmも150cmも道路交通法の数字ではない |
「6歳未満」には、条文上の例外がある

チャイルドシートの義務を定めているのは、道路交通法71条の3第3項です。
自動車の運転者は、幼児用補助装置……を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。
(道路交通法71条の3第3項)
まず「幼児」が誰なのか。これは同じ法律の別のところにあります。
幼児(六歳未満の者をいう。以下同じ。)
(道路交通法14条3項)
ここまでなら「6歳未満」で終わりです。ところが、同じ71条の3の中に、この「幼児」をさらに絞る一文があります。
幼児(適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するものを除く。以下この条において同じ。)
(道路交通法71条の3第2項)
注目してほしいのは末尾の「以下この条において同じ」です。この定義は同じ条の第3項にも引き継がれます。つまりチャイルドシートの義務についても、「大人用のシートベルトを適切に装着させられる座高がある子」は、はじめから「幼児」に当たりません。
神奈川県警も、6歳未満でも十分な座高があってシートベルトを適切に使える子どもは、チャイルドシートの対象外になると案内しています。
では、何センチから対象外なのか
法令に数値基準はありません。
条文が使っているのは身長ではなく座高で、しかも「何センチ」とは書かれていません。「適切に座席ベルトを装着させるに足りるか」という、機能で書かれた基準です。
ネット上では「140cm」という数字をよく見かけます。140cmも、後で出てくる150cmも、道路交通法の数字ではありません。大人用シートベルトが正しい位置に当たるようになる目安として、安全団体などが示しているものです。
安全面では、シートベルトが首や腹部ではなく、肩と腰骨に正しくかかることが重要です。
ただし、これは「身長が高そうなら自己判断でチャイルドシートを外してよい」という意味ではありません。6歳未満では使用が原則です。当てはまるかどうか迷う場合はチャイルドシートを使い、必要に応じて警察に確認してください。
6歳になるのはいつか
年齢の数え方については、はっきりしています。法律上、6歳になるのは誕生日の前日の午後12時、つまり誕生日の午前0時です。したがって通常は、6歳の誕生日当日から「6歳未満」ではなくなります。
小学校入学が基準ではありません。早生まれの子は、入学前に義務が外れることになります。
罰金も反則金も、ありません
チャイルドシートを使わずに対象の幼児を乗せた場合、刑事罰はありません。青切符も切られず、反則金も納めません。
理由は単純で、道路交通法の罰則規定に、71条の3第3項違反を処罰する規定が置かれていないからです。警察の案内でも、「幼児用補助装置使用義務違反」は反則金等がなく、点数1点とされています。
それでも、点数は1点つく
罰則がないから何も起きない、というわけではありません。行政処分のほうには、はっきり載っています。
道路交通法施行令の別表第二に「幼児用補助装置使用義務違反」があり、基礎点数1点と定められています。
| チャイルドシート未使用 | |
|---|---|
| 刑事罰(罰金・拘禁刑) | なし |
| 反則金(青切符) | なし |
| 違反点数 | 1点 |
「お金は取られないが、違反点数は1点付く」。免許の色や更新区分に効いてくるのは点数のほうなので、軽い違反ではありません。
なお、後部座席のシートベルトにも似た構造があります。そちらは後部座席のシートベルト義務化|罰則と知らないと危険な実態を徹底解説にまとめています。
政令で定められた8つの免除

道路交通法71条の3第3項には、ただし書きがあります。
ただし、疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
つまり例外は2階建てです。法律本体に「疾病」の例外があり、それとは別に、政令に8つ定められています。政令のほうが道路交通法施行令26条の3の2第3項です。
| # | 免除される場合 |
|---|---|
| 1 | 座席の構造上、チャイルドシートを固定できないとき(他の座席で使える場合を除く) |
| 2 | 定員内で人を乗せようとしたとき、全員ぶんを固定すると全員が乗れなくなるとき |
| 3 | 負傷や障害のため、使わせることが療養上・健康保持上適当でない幼児を乗せるとき |
| 4 | 著しく肥満しているなど、身体の状態により適切に使わせられない幼児を乗せるとき |
| 5 | 運転者以外の人が授乳その他の日常生活上の世話をしている幼児を乗せるとき |
| 6 | タクシー・バス(一般旅客自動車運送事業)の旅客である幼児を乗せるとき |
| 7 | 自家用有償旅客運送など(道路運送法78条2号・3号)で人を運ぶとき |
| 8 | 応急の救護のため、医療機関などへ緊急に搬送する必要がある幼児を乗せるとき |
3号が「負傷又は障害」なのに対し、法律本体のただし書きは「疾病」。別のものとして書き分けられています。
タクシーとバスは、免除される
6号がそれです。タクシーやバスに子どもを乗せるとき、運転者にチャイルドシートの使用義務は課されません。
これは知っておくと実際に役立ちます。子連れでタクシーを使うとき、「チャイルドシートがないから乗せられないのでは」と迷う必要はありません。少なくとも道路交通法上、タクシー側にチャイルドシートを使用させる義務はありません。
ただし、免除されているのは法律上の義務であって、衝突時のリスクが消えるわけではありません。
定員内でも、全員分を付けると全員が乗れないとき

2号です。「定員いっぱいだから免除」という単純な話ではありません。
乗車定員の範囲内で人を乗せようとしたときに、幼児全員ぶんのチャイルドシートを固定すると全員が乗れなくなる場合の免除です。しかも、付けられるぶんまで外してよいわけではありません。可能な限り多く使用したうえで、固定できない数の幼児だけが免除されます。
授乳・世話をしているとき
5号です。条文はこう限定しています。
運転者以外の者が授乳その他の日常生活上の世話(幼児用補助装置を使用させたままでは行うことができないものに限る。)を行つている幼児を乗車させるとき
「チャイルドシートに座らせたままではできない世話」に限られます。そして世話をするのは運転者以外の人です。
応急の救護
8号です。子どものけがや急病などで、応急の救護のため医療機関などへ緊急に搬送する必要がある場合の免除です。
単に急いでいる、チャイルドシートを取り付ける時間が惜しい、というだけでは、この免除には当たりません。
「付けていればいい」わけではない

71条の3第3項は、「幼児用補助装置」をこう定義しています。
幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であつて、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するもの
条件が3つ入っています。
- 座席に固定して用いるものであること
- 保安基準(道路運送車両法)に適合していること
- 幼児の発育の程度に応じた形状であること
体格に合っていないものや、保安基準に適合していないものは、この定義から外れる可能性があります。「何でもいいから積んである」ではなく、「その子に合ったものを、正しく固定して使う」までが条文の書き方です。
購入するときは、安全基準への適合を示す表示(Eマーク)があるかも確認してください。国土交通省は、現行の安全基準に適合した製品にはEマークが付いていると案内しています。
なお、座布団や普通のクッションは、ジュニアシートの代わりにはなりません。神奈川県警も、代用にならないと案内しています。
ジュニアシートは、法律上は何なのか

「チャイルドシートは卒業したがシートベルトはまだ大きい」段階で使うのがジュニアシート(ブースターシート)です。
法律に「ジュニアシート」という言葉は出てきません。条文上はすべて「幼児用補助装置」です。保安基準に適合し、その子の発育に合ったジュニアシートであれば、道路交通法上の「幼児用補助装置」に当たります。
法律上の義務と、安全上の卒業時期は別
ここは分けて考えてください。
法律上は、原則6歳未満が対象です(先に見た座高の例外があります)。
安全面では、6歳を過ぎても、大人用シートベルトが首や腹部にかかる体格ならジュニアシートを続けることが勧められています。JAFは2024年に、使用推奨の目安を身長140cm未満から150cm未満へ変更しています。ただし150cmも絶対的な線引きではありません。
つまり、法律上の義務が終わることと、ジュニアシートを卒業してよいことは、別の話です。
助手席に乗せてもいいのか
道路交通法に、幼児を助手席に乗せることを一律に禁止する規定はありません。
ただし、だから設置してよい、という話にはなりません。保安基準の側にはエアバッグと後ろ向きチャイルドシートについて警告表示等の規定があり、国土交通省も、助手席エアバッグが作動する状態で後ろ向きに設置することを極めて危険としています。
国土交通省は、チャイルドシートを後部座席に取り付けるよう案内しています。助手席で使用できるかどうかは、自動車とチャイルドシート双方の取扱説明書を確認してください。
よくある誤解
「6歳未満なら、体格に関係なく必ず必要」
条文は「適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するもの」を幼児から除いています(71条の3第2項、第3項にも適用)。ただし何cmという数値基準はありません。
「140cmまでが法律の基準」
140cmも150cmも道路交通法の数字ではありません。150cmはJAFが2024年に示した安全上の目安です。
「違反したら反則金を取られる」
取られません。罰則規定そのものが置かれていません。ただし違反点数1点は付きます。
「タクシーにもチャイルドシートが必要」
道路交通法上、運転者の使用義務は免除されています(施行令26条の3の2第3項6号)。バスも同じです。
「定員いっぱいなら全員ぶん載せなくてよい」
全員ぶんを固定すると全員が乗れなくなる場合の免除で、付けられるぶんは使う必要があります。
「チャイルドシートさえ付いていればよい」
条文は保安基準への適合と「幼児の発育の程度に応じた形状」を求めています。
まとめ
- 義務の対象は6歳未満の「幼児」(道路交通法14条3項)。6歳の誕生日当日から対象外になる
- ただし6歳未満でも例外がある。71条の3第2項が「適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するもの」を幼児から除き、その定義は第3項にも及ぶ
- 何cmから対象外かという数値基準は法令にない。140cmも150cmも道路交通法の数字ではない
- 違反しても罰金も反則金もない。道路交通法の罰則規定に、この義務違反を処罰する規定が置かれていないため
- ただし違反点数は1点つく(施行令別表第二)
- 免除は政令に8つ(施行令26条の3の2第3項)。それとは別に、法律本体に「疾病」の例外がある
- タクシー・バスは運転者の使用義務が免除。2号は「全員ぶんを付けると全員が乗れないとき」で、付けられるぶんは使う
- 条文は保安基準への適合と「幼児の発育の程度に応じた形状」を求めている。購入時はEマークも確認
- 法律上の義務が終わることと、安全上の卒業時期は別。JAFの目安は150cm未満(2024年変更)
免許・走行・駐停車まわりで「知らないと違反になる」論点は、知らないと違反になる道路交通法まとめ|走行・駐停車・免許手続きの「分かれ目」を整理に集めてあります。
筆者から
調べていていちばん驚いたのは、条文の仕掛けでした。
最初は「6歳未満。それだけ」と書くつもりでした。ところが71条の3を通して読むと、第2項が「幼児」から「シートベルトを適切に使える座高の子」を除いていて、そこに「以下この条において同じ」と書いてある。第2項に置かれた定義が、第3項にそのまま効いているわけです。
条文の途中に置かれた一言が、記事の結論を変えました。法令を読むときに、いちばん怖いところだと思います。
罰則がないことも意外でした。道路交通法の罰則規定を通して見ても、71条の3第3項は出てきません。そのかわり点数は1点付く。お金は取らないが、免許には響かせるという設計です。
そして、法律の話と安全の話は最後まで別でした。義務が外れることと、その子が安全であることは、まったく違います。JAFが目安を150cmへ引き上げたのは2024年です。法律のほうは、そこまで見ていません。
よくある質問
Q. チャイルドシートは何歳まで義務ですか。
A. 原則として6歳未満です。道路交通法14条3項が「幼児」を6歳未満の者と定め、71条の3第3項がその幼児にチャイルドシートを使わせることを義務としています。6歳の誕生日当日から「6歳未満」ではなくなります。
Q. 6歳未満でも体が大きければ、使わなくてよいのですか。
A. 原則として必要です。道路交通法71条の3では「適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高」がある幼児が対象から除かれていますが、数値による法定基準はなく、6歳未満では使用が原則です。体が大きいというだけで外せるわけではありません。
Q. 140cmを超えれば大丈夫ですか。
A. 140cmは道路交通法の数字ではありません。安全面ではJAFが2024年に目安を150cm未満へ変更していますが、これも法律上の基準ではありません。
Q. 使わなかったら、反則金はいくらですか。
A. 反則金はありません。罰金もありません。道路交通法の罰則規定に、この義務違反を処罰する規定が置かれていないためです。ただし違反点数1点が付きます。
Q. タクシーに子どもを乗せるとき、チャイルドシートは必要ですか。
A. 道路交通法上、タクシーやバス(一般旅客自動車運送事業)の運転者には使用義務が課されていません(施行令26条の3の2第3項6号)。
Q. 定員内ですが、全員ぶんのチャイルドシートを固定できません。
A. 全員ぶんを固定すると全員が乗れなくなる場合、固定できない数のぶんは免除されます(同項2号)。ただし付けられるぶんは使ってください。
Q. 助手席に乗せてもいいですか。
A. 道路交通法に一律に禁止する規定はありません。ただし国土交通省は、助手席エアバッグが作動する状態での後ろ向き設置を極めて危険とし、後部座席への取り付けを案内しています。車両とチャイルドシートの取扱説明書を確認してください。
Q. ジュニアシートでも義務を果たしたことになりますか。
A. なります。保安基準に適合し、その子の発育に合ったジュニアシートであれば、道路交通法上の「幼児用補助装置」に当たります。
根拠法令・出典
- 道路交通法14条3項(幼児・児童の定義)、71条の3第2項・第3項(座席ベルト及び幼児用補助装置)、117条〜123条(罰則)
- 道路交通法施行令26条の3の2第3項(座席ベルト及び幼児用補助装置に係る義務の免除)、別表第二(違反行為の種別及び基礎点数)
- 道路運送車両法第3章(保安基準)/道路運送法3条1号、78条2号・3号
- 国土交通省(チャイルドシートの安全基準適合表示・助手席エアバッグに関する注意喚起)
- JAF(チャイルドシート・ジュニアシートの使用推奨目安/2024年変更)
- 神奈川県警察(チャイルドシートの対象に関する案内)
※本記事は2026年8月時点の法令にもとづく一般的な解説です。個別の製品の使用方法は取扱説明書に、手続きや取締りの運用は住所地の都道府県警察にご確認ください。
