引っ越しの手続きは、まとめてやってしまいたいものです。役所で転入届を出し、電気とガスと水道を切り替え、ネットの住所を直す。その流れで「免許証の住所変更も14日以内だったはずだ」と思っている人は、たぶん少なくありません。
でも、免許証の住所変更には、「14日以内」のような具体的な日数の定めはありません。道路交通法が求めているのは「速やかに」届け出ることです。14日以内なのは市区町村に出す転入届のほうで、根拠になっている法律が別だからです。
かといって「日数が決まっていないなら急がなくていい」わけでもありません。届出そのものは義務で、しなければ罰則の対象になります。しかもそれ以上に効いてくるのが、更新の案内が旧住所に送られ続けるという、地味で確実な副作用のほうです。
この記事では、免許証の住所変更を、期限・届出先・必要書類・しなかった場合の順に整理します。あわせて、住所変更よりも条件が厳しい本籍・氏名の変更、そして2025年に始まったマイナ免許証での扱いも分けて説明します。
まず結論|押さえるのは3つだけ
| 論点 | 答え |
|---|---|
| 期限 | 法律の言い方は「速やかに」。14日以内などの具体的な日数は定められていない(道路交通法94条1項) |
| 届出先 | 新しい住所地を管轄する公安委員会。実際の窓口は警察署・運転免許更新センター・運転免許試験場 |
| 手数料 | 無料 |
| 必要書類(住所) | 免許証と、新しい住所が確認できる書類。住民票の写しは選択肢のひとつで、必須ではない |
| 必要書類(本籍) | 本籍が記載された住民票の写し。こちらは提示ではなく提出 |
| 必要書類(氏名のみ) | 本籍が記載された住民票の写しのほか、変更後の氏名が確認できるマイナンバーカードで手続きできる場合がある |
| しないと | 2万円以下の罰金または科料。加えて、更新の案内が旧住所に届く |
以下、ひとつずつ見ていきます。
「14日以内」は市区町村の話で、免許証は別の法律

引っ越しの手続きが「14日以内」と刷り込まれているのには理由があります。実際にそう決まっている手続きがあるからです。ただしそれは、免許証の話ではありません。
住民基本台帳法:市区町村への届出は14日以内
住民票を動かす手続きは、住民基本台帳法が決めています。
- 転入届(別の市区町村から移ってきた)……転入をした日から14日以内(22条1項)
- 転居届(同じ市区町村の中で引っ越した)……転居をした日から14日以内(23条)
- 転出届(出ていく)……あらかじめ(24条)
正当な理由なくこの届出をしなかった場合は、5万円以下の過料です(52条2項)。
道路交通法:免許証は「速やかに」
一方、免許証のほうはこう書かれています。
免許を受けた者は、第九十三条第一項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、速やかに住所地を管轄する公安委員会(公安委員会の管轄区域を異にして住所を変更したときは、変更した後の住所地を管轄する公安委員会)に届け出て、免許証に変更に係る事項の記載……を受けなければならない。
(道路交通法94条1項)
「速やかに」であって、「14日以内に」ではありません。日数の定めは、法律にも施行令にも施行規則にも置かれていません。
だからといって努力目標というわけではなく、「届け出なければならない」と書かれた義務です。違反した場合は2万円以下の罰金または科料(121条1項10号)。市区町村側の過料とは、性質が違います。
なお、住所変更の届出を怠ったこと自体には、違反点数は設定されていません(道路交通法施行令別表第二に94条は挙げられていません)。刑罰の対象になりうることとは、別の話です。
「過料」「科料」「罰金」の違いを詳しく
ここは当サイトで何度か扱ってきた区別です。
| 市区町村への届出 | 免許証の変更届出 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 住民基本台帳法22条・23条 | 道路交通法94条1項 |
| 期限 | 14日以内 | 速やかに(具体的な日数の定めなし) |
| 制裁 | 5万円以下の過料 | 2万円以下の罰金または科料 |
| 性質 | 行政上の秩序罰。前科にならない | 刑罰。罰金・科料とも、有罪が確定すれば前科として扱われる |
ここで紛らわしいのが、「過料」と「科料」です。読みが同じで字が似ていますが、別物です。
- 過料……行政上の秩序罰。刑罰ではないので前科にならない(住民基本台帳法52条2項)
- 科料……1,000円以上1万円未満の刑罰。罰金の軽いもの(道路交通法121条1項)
道路交通法94条1項に違反した場合の条文は「2万円以下の罰金又は科料」で、どちらも刑罰です。市区町村側の過料とは、金額の大小ではなく枠組みが違います。金額だけ見れば市区町村のほうが高いのですが、「期限がゆるいほうが軽い」とは限らない、ということです。
届出先は「新しい住所地」の公安委員会

ここも誤解が多いところです。94条1項のカッコ書きをもう一度見てください。
(公安委員会の管轄区域を異にして住所を変更したときは、変更した後の住所地を管轄する公安委員会)
つまり、都道府県をまたいで引っ越しても、前に住んでいた県の警察に行く必要はありません。新しい住所地の窓口だけで完結します。引っ越し前に慌てて手続きをしに行く必要もありません。
実際の窓口と、開いている時間
法律上は「公安委員会」ですが、実際に行くのは次のいずれかです。
- 警察署(一部の署は取り扱わない場合があります)
- 運転免許更新センター
- 運転免許試験場
受付場所・曜日・時間は都道府県によって違います。東京と神奈川だけでも、これだけ差があります。
| 東京(警視庁) | 神奈川県警 | |
|---|---|---|
| 警察署 | 平日 8:30〜16:30 | 平日 9:00〜12:00、13:00〜16:00 |
| 更新センター/免許センター | 平日 8:30〜16:30 | 平日 8:30〜11:00、13:00〜16:00 |
| 試験場 | 平日 8:30〜16:30/日曜 8:30〜12:00、13:00〜16:30 | 上の免許センターが該当 |
受付時間を合計すると、東京の窓口は1日8時間、神奈川の免許センターは5時間半です。とくに神奈川は午前の受付が11時まで。「昼休みに行こう」と思って着いたら午前の部が終わっていた、という取りこぼしが起きるのはこの差です。
土日については、東京は試験場が日曜に開いていますが、警察署と更新センターは平日のみです。神奈川はさらに条件が付いていて、日曜に記載事項変更ができるのは免許更新と同時に手続きする場合だけ、しかも免許センターのみです。
平日に動けない人ほど、事前に自分の県のページで確認しておく価値があります。「土日にやっている県もある」で動くと、たいてい外します。
必要書類|住所変更に住民票は必須ではない

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。
「免許証の住所変更には住民票が要る」と書いてある記事は多いのですが、法令はそこまで限定していません。
一 住所を変更した者 住民票の写しその他の住所を確かめるに足りる書類
(道路交通法施行規則20条2項1号)
「その他の住所を確かめるに足りる書類」が入っています。何が該当するかは各都道府県が案内していて、実際にかなり幅があります。
新しい住所が確認できる書類の例
東京(警視庁)が挙げているものは次のとおりです。
- 住民票の写し
- マイナンバーカード(通知カードは不可。券面で新住所が確認できるもの)
- 資格確認書
- 消印付郵便物 など
神奈川県警もほぼ同じで、健康保険の資格確認書、マイナンバーカード、身分証明書、新住所に届いた郵便物などを挙げています。
つまり、新住所に届いた郵便物1通で足りることがあるわけです。住民票を取りに役所へ行き、手数料を払って並ぶ手間が、そもそも要らない場合があります。
ただし、郵便物には条件がある
そのかわり、郵便物には細かい条件が付きます。神奈川県警は使えないものを具体的に挙げています。
- 転送されたもの(転送シールが貼られたもの)
- 宛名がカタカナで書かれているもの
- 住所が町名からしか書かれていないもの(都道府県・市区町村が省略されているもの)
言われてみれば当然で、転送された郵便物は「その住所に届いた」ことの証明にならず、カタカナ宛名や町名だけの表記では本人と住所の対応が確認できません。ダイレクトメールの多くは、この時点で外れます。
東京は「消印付郵便物 等」としか書いておらず、神奈川ほど細かい条件を明示していません。郵便物を使えるか、どこまでが認められるかは、必ず自分の都道府県警察の案内で確認してください。ここは県によって書きぶりがはっきり違うところです。
住民票を使うなら、3つの条件がある
住民票の写しを持っていく場合は、次の3つを満たしている必要があります(警視庁の案内)。
- 交付日から6か月以内のもの
- コピー不可(原本を持参する)
- マイナンバー(個人番号)が記載されていないもの
3つめが要注意です。コンビニ交付や窓口の申請書では「個人番号の記載」を選べるようになっていて、うっかり「記載する」を選ぶと使えません。取り直しになります。
書く用紙は窓口にある
提出するのは「運転免許証記載事項変更届」という届出書です(施行規則20条1項、別記様式第十六)。用紙は警察署や免許センターに置いてあるので、事前に印刷して持っていく必要はありません。
通常の住所変更では、新しい免許証は発行されない
もうひとつ、意外に知られていないことがあります。通常の記載事項変更では、新しい免許証は発行されません。神奈川県警は「現在お持ちの運転免許証の裏面に変更事項を記載して返却します」と案内しています。
つまり、券面の表に印刷された住所は古いままで、裏面に新しい住所が追記された状態になります。免許証を身分証明書として使うときに「表面の住所が違う」と言われることがあるのは、この仕組みのためです。
表面に新しい住所を出したい場合は、別に再交付を申請できます。道路交通法94条2項は、変更の届出をしたときに再交付を申請できると定めていて、警視庁も再交付の対象として「運転免許証の裏面に記載されている内容を表面に表示をしたい方(すでに住所、氏名を変更している方……)」を挙げています。ただし記載事項変更と違って手数料がかかります(金額は免許証の持ち方によって変わります)。
「提示」と「提出」は違う
見落とされがちな区別があります。施行規則20条2項は、住所変更を提示、本籍・氏名変更を添付(=提出)と書き分けています。
- 住所変更……書類を見せるだけ。その場で返ってきます
- 本籍・氏名変更……書類は届出書に添付して回収されます
(氏名だけの変更を、変更後の氏名が確認できるマイナンバーカードの提示で済ませられる場合があるのは、後述のとおりです。)
住民票を出したのに返ってこない、と驚かないための予備知識です。なお、同じ本籍地の複数人が同時に手続きするなら、全員が載った住民票1通で足ります(警視庁)。引っ越しと結婚が重なったようなときは、家族でまとめて行くほうが早いということです。
本籍・氏名が変わったときは、住所変更より条件が厳しい
免許証の変更届出は、住所だけの話ではありません。対象になるのは道路交通法93条1項各号に掲げる事項で、4号にこう書かれています。
四 免許を受けた者の本籍、住所、氏名及び生年月日
つまり、結婚や離婚で氏名が変わったとき、本籍を移したときも、同じ94条1項の届出義務がかかります。
券面に本籍が書かれていないのに、なぜ届出が要るのか
ここで疑問が出ます。いまの免許証を見ても、本籍はどこにも書かれていません。
そのとおりで、本籍欄そのものが券面から削除されています。警視庁は「本籍はプライバシー保護のため、表面から削除されました」と説明していて、2010年7月17日施行の施行規則改正によるものです。
法令にも、そう書かれています。施行規則19条1項は、券面に書かなくてよいものを本籍だけと名指ししています。そして19条の2は、93条1項各号の事項を免許証の半導体集積回路(ICチップ)に記録すると定めています。
つまり本籍は、なくなったのではなくICチップの中に移ったというのが正確なところです。記録されている以上、変わったら直す必要がある。だから届出義務は残っています。
本籍変更には「本籍が記載された住民票」が要る
必要なのは、ただの住民票ではありません。
二 本籍……又は氏名を変更した者…… 本籍……が記載された住民票の写し
(道路交通法施行規則20条2項2号)
住民票を取るときは、本籍を記載したものを指定してください。本籍が省略された住民票では、この手続きには使えません。マイナンバーの記載は不要、本籍の記載は必要。逆に覚えてしまうと詰みます。
氏名だけならマイナンバーカードでも足りる場合がある
警視庁は、氏名変更のみの場合について、マイナンバーカードの追記欄で氏名の変更が確認できるなら、免許証とマイナンバーカードの提示で手続きできるとしています。神奈川県警も、氏名変更には「新氏名を確認できるマイナンバーカード又は本籍が記載されている住民票の写し」としています。
婚姻届を出したあとにマイナンバーカードの氏名を直しているなら、住民票を取らずに済む可能性があります。
旧姓を併記したいとき
免許証には旧姓を併記できますが、先に市区町村で旧姓(旧氏)を併記する請求手続きを済ませ、旧姓が併記された住民票の写しかマイナンバーカードを持っていく必要があります。旧姓だけの表記はできません。
マイナ免許証を持っている人は、順番が決まっている
2025年3月24日から、マイナンバーカードに免許情報を記録する「マイナ免許証」が始まりました。持ち方によって、住所変更のやり方が変わります。
原則:市区町村が先、警察があと
マイナ免許証を持っている人の住所変更は、マイナンバーカードの券面に記載された住所が、そのまま変更後の住所になります。だから順番が決まります。
- 市区町村でマイナンバーカードの住所変更をする
- そのうえで警察の窓口へ行く
先に警察へ行っても、券面が古いままでは手続きになりません。警視庁も「来場される前に、お住まいの自治体で、マイナンバーカードの住所変更をした後、手続をしてください」と明記しています。
このとき持っていくのは、免許証(従来の免許証も持っている人)とマイナ免許証だけです。住民票は要りません(施行規則20条3項、21条の12)。
裏を返すと、2枚持ちの人は先に市区町村でマイナンバーカードの住所を変えておく必要があります。神奈川県警は「2枚持ちの方は、変更後のマイナンバーカードがないと運転免許証の記載事項変更ができません」と明記しています。カードの住所変更ができない事情がある場合は、窓口へ行く前に警察に相談してください。
ワンストップは「マイナ免許証のみ」の人だけ
市区町村に届け出れば警察への届出そのものが要らなくなる、いわゆる住所変更ワンストップサービスがあります。対象はマイナ免許証のみを持っている人で、従来の免許証と2枚持ちの人は対象外です。
そのうえで、あらかじめ利用開始の手続きをしておく必要があります。運転免許センターや警察署等で、利用規約の確認、警察へ提供する項目の選択、有効な署名用電子証明書の提出を済ませる、という流れです。
法律上の構造も、そのとおりに書かれています。マイナ免許証のみを持つ人でも、届出義務そのものは残っています(95条の5第2項で「届け出なければ」と読み替えられます)。そのうえで、内閣府令で定める措置を講じた人だけが、95条の5第3項によって届出不要になる、という順番です。一体化しただけでは、まだ届出が要ります。
見落としやすいのは「本籍だけ別枠」であること
そしてもうひとつ、あまり知られていない分岐があります。届出が要らなくなる範囲は、住所・氏名・生年月日と、本籍とで分かれています。
95条の5第3項は2つの号に分かれていて、いわゆる「ワンストップ」にあたる2号で不要になるのは住所・氏名・生年月日まで。本籍は1号で、別の措置が要ります。
そして、ここに大事な違いがあります。住所・氏名・生年月日のほうは、警察の窓口で済ませられます。施行規則21条の14は、2号の措置について「窓口でマイナ免許証を提示する方法」と「マイナポータルから自分で送る方法」のどちらでもよいと定めています。マイナポータルを使わなければならないわけではありません。
一方、本籍のほうはマイナポータルを避けられません。1号の措置を定めた施行規則21条の13は、3つの手順をすべて要求していて、その中に戸籍電子証明書の識別符号をマイナポータル経由で送る作業が含まれています。
神奈川県警が「ワンストップサービス(氏名、住所、生年月日)」と「マイナポータル連携(本籍変更等)」を別のものとして並べて案内しているのは、この条文の建て付けと一致しています。
つまり、住所変更ワンストップを使っている人でも、本籍を移したときは警察への届出が残ることがあります。持っていくのは、本籍が記載された住民票の写しです。
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本人が行けないとき|東京・神奈川では代理人でもできる

これは意外に知られていません。代理人による手続きを認めている都道府県があります。東京と神奈川は、どちらも代理人可です。
警視庁の条件は「住民票に併記されている方であれば、本人以外であっても代理人として申請することができます」。つまり同じ住民票に載っている家族です。神奈川県警も「代理人でも可」としています。
代理人になれる人や必要書類は都道府県で違う可能性があるので、自分の県の案内を確認してください。以下は警視庁の場合です。それぞれの手続きに必要な書類に加えて、次の2つが要ります。
- 届出委任者と代理人が併記された住民票の写し(コピー不可・交付日から6か月以内・マイナンバー記載なし)
- 住所変更なら提示のみ、本籍・氏名変更なら提出
- 代理人の住所・氏名等が確認できる書類(運転免許証、マイナンバーカード、資格確認書、旅券など)の提示
そして警視庁では、同一住所の複数人が同時に手続きするなら、全員が載った住民票1通で足ります。家族で引っ越したとき、代表者がまとめて行けるということです。平日に動けない人にとっては、現実的な選択肢のひとつです。
変更しないと、何が起きるか

罰則の対象になる
すでに書いたとおり、2万円以下の罰金または科料です(121条1項10号)。ただ、罰則とは別に、実務で見落としやすいものがあります。
更新の案内が旧住所に送られ続ける
免許の更新期間が近づくと届く更新連絡書は、警察が把握している住所に送られます。住所変更をしていなければ、当然、前に住んでいた家に届きます。
そして、ここが重要なのですが、更新連絡書はあくまで案内です。届かなかったことは、失効しなかった理由になりません。更新期間内に手続きをしなかった時点で、免許は失効します。
失効すると、経過した期間によって手続きが三段階に分かれます。6か月以内なら学科・技能試験が免除され、1年以内なら仮免許の扱いが変わり、3年を超えると原則として一から取り直しです。詳しくは免許更新を忘れたら?失効後6か月・1年・3年で変わる再取得手続にまとめました。
引っ越しから更新までは、たいてい何年か空きます。その何年かのあいだ、住所を直していないという事実を忘れていられるのが、この問題のいちばん厄介なところです。
免許証は身分証明書としても使われている
もうひとつ、実務的な副作用があります。免許証は、金融機関の口座開設や携帯電話の契約で本人確認書類として使われます。表面の住所が現住所と違うままだと、そのままでは受け付けられないことがあります。
ケース別|迷いやすいところ
住民票を移していない単身赴任・学生
住民票を実家に置いたまま下宿している、単身赴任先に移していない、というケースです。
「各人の生活の本拠をその者の住所とする」と定めているのは民法22条です。ただし、単身赴任や学生のように生活の拠点が複数ある場合、どこが住所にあたるかは生活の実態によって変わり、一律には決まりません。住民登録については市区町村、免許証の届出については警察・免許センターに確認してください。この記事で断定できる範囲を超えています。
引っ越しと更新が近いとき
更新の手続きと同時に、住所変更をすることもできます。更新期間が目前なら、別の日に2回行く必要はありません。ただし記載事項変更に必要な書類は、更新のときにあわせて持っていってください。神奈川では、日曜に記載事項変更ができるのは更新と同時の場合だけ、という運用にもなっています。
なお、住所地以外の都道府県で更新する「経由地更新」という手続きもありますが、申請できる期間が免許証の持ち方によって変わります。
国外へ転出して住民票を抜いた場合
住民票が除票されている人も手続きできます。警視庁の場合、住所を確かめるに足りる書類を提示するか、「国外転出者の滞在場所証明書」を、証明した人の身分証明書などを添えて提出します。証明書は本人ではなく証明人が書くもので、親族宅に滞在する場合の証明人は世帯主である必要があります。
2025年10月に必要書類が変わっている
令和7年(2025年)10月1日施行の施行規則改正で必要書類が変わりましたが、警視庁は住所変更について「日本国籍の方:変更点はありません」と案内しています。変わったのは外国籍の方の必要書類です。
よくある誤解
「14日以内にやらないと違反になる」
14日以内なのは市区町村への転入届・転居届です。免許証は「速やかに」で、具体的な日数は定められていません。ただし届出そのものは義務で、怠れば罰則の対象です。
「住民票がないと手続きできない」
法令の表現は「住民票の写しその他の住所を確かめるに足りる書類」です。マイナンバーカード、資格確認書、条件を満たした郵便物でも足りる場合があります。ただし本籍の変更には、本籍が記載された住民票の写しが要ります。
「引っ越す前に、前の県の警察で手続きが要る」
要りません。届出先は新しい住所地の公安委員会です。
「マイナ免許証にすれば、もう警察に行かなくていい」
一体化しただけでは届出義務は残ります。事前に警察で利用開始手続きをして、署名用電子証明書を提出してはじめて届出が不要になります。しかも対象はマイナ免許証のみを持つ人で、2枚持ちは対象外です。
「本籍は券面に書かれていないから、変わっても関係ない」
券面の本籍欄は2010年に削除されましたが、ICチップには記録されています。届出の対象です。
「住所変更すれば、新しい免許証がもらえる」
通常の記載事項変更では、いまの免許証の裏面に追記されて返ってきます。表面に出したい場合は、別に有料の再交付を申請します。
まとめ
- 免許証の住所変更に、「14日以内」のような具体的な日数の定めはない。法律の言い方は「速やかに」(道路交通法94条1項)。14日以内は市区町村への転入届・転居届(住民基本台帳法22条・23条)
- 届け出ないと2万円以下の罰金または科料(121条1項10号)。どちらも刑罰で、市区町村側の5万円以下の過料(刑罰ではない)とは枠組みが違う
- 届出先は新しい住所地の公安委員会。前の県に行く必要はない。手数料は無料
- 住所変更の必要書類は「住民票の写しその他の住所を確かめるに足りる書類」。マイナンバーカード、資格確認書、条件を満たした郵便物でも足りる場合がある
- 住民票を使うなら、6か月以内・コピー不可・マイナンバーの記載なし
- 本籍の変更には、本籍が記載された住民票の写しが必要。こちらは提示ではなく提出。住民票は指定しないと本籍が省略されて出てくる
- 氏名だけの変更なら、変更後の氏名が確認できるマイナンバーカードで手続きできる場合がある
- マイナ免許証を持っているなら、市区町村が先、警察があと。券面の住所が変更後の住所になる
- ワンストップはマイナ免許証のみの人が、事前に警察で利用開始手続き(署名用電子証明書の提出)をした場合だけ。住所・氏名・生年月日は窓口で完結でき、本籍だけはマイナポータルが要る
- 通常の手続きでは新しい免許証は出ない。裏面に変更事項が追記されて返却される。表面に出したいときは、別に有料の再交付を申請できる(94条2項)
- 更新期間が近いなら、更新と同時に住所変更もできる
- 代理人を認めている都道府県もある。東京では同じ住民票に載っている人が代理人になれ、同一住所の複数人が同時なら住民票1通で足りる
- 罰則とは別に、住所を変えないと更新連絡書が旧住所に送られる原因になる
免許まわりで「知らないと違反になる」「うっかりで詰む」論点は、知らないと違反になる道路交通法まとめ|走行・駐停車・免許手続きの「分かれ目」を整理にまとめてあります。
筆者から
この記事を書くきっかけは、「14日以内」という数字がどこから来ているのか気になったことでした。調べてみると、住民基本台帳法にはたしかに14日と書いてあり、道路交通法には「速やかに」としか書いていない。まったく別の法律の期限が、引っ越しという一つの出来事のなかで混ざっていただけでした。
もうひとつ驚いたのが、住所変更に住民票が必須ではないことです。条文は「住民票の写しその他の住所を確かめるに足りる書類」としか言っていません。役所に住民票を取りに行く時間が惜しくて後回しにしていた人が、実は郵便物1通で済んだかもしれない、というのは、けっこうもったいない話だと思いました。
そのかわり、本籍の変更には本籍が記載された住民票が要る。しかも本籍を記載するよう指定しないと、必要な書類を満たさないことがある。要らないところで厳しく構え、必要なところで足りないという組み合わせが起きやすい手続きです。
窓口の受付時間が県によってこれだけ違うことも、東京と神奈川を並べてみるまで意識していませんでした。神奈川の免許センターは午前の受付が11時まで。知らずに行けば、それだけで一日が無駄になります。
よくある質問
Q. 免許証の住所変更に期限はありますか。
A. 「14日以内」のような具体的な日数は定められていません。道路交通法94条1項が求めているのは「速やかに」届け出ることです。市区町村への転入届・転居届が14日以内(住民基本台帳法22条・23条)なので混同されやすいのですが、別の法律です。日数が決まっていないだけで届出は義務であり、しなければ2万円以下の罰金または科料の対象です。
Q. 住民票がないと手続きできませんか。
A. 住所変更だけなら、住民票以外でもできる場合があります。施行規則20条2項1号の表現は「住民票の写しその他の住所を確かめるに足りる書類」で、東京・神奈川ともマイナンバーカードや資格確認書、条件を満たした郵便物を例に挙げています。ただし本籍の変更には、本籍が記載された住民票の写しが必要です。氏名だけの変更なら、変更後の氏名が確認できるマイナンバーカードで手続きできる場合があります。
Q. 引っ越す前に、前に住んでいた県の警察で手続きが必要ですか。
A. 必要ありません。道路交通法94条1項は、都道府県をまたいで住所を変えたときの届出先を「変更した後の住所地を管轄する公安委員会」と定めています。
Q. 本人が行けません。家族が代わりに手続きできますか。
A. 代理人を認めている都道府県があります。東京と神奈川は代理人可です。警視庁の場合、同じ住民票に併記されている人が代理人になれ、届出委任者と代理人が併記された住民票の写しと、代理人本人の確認書類が追加で必要です。同一住所の複数人が同時に手続きする場合は、全員が載った住民票1通で足ります。代理人になれる人や書類は県で違う可能性があるので、自分の県の案内を確認してください。
Q. マイナ免許証にすれば、警察に行かなくてよくなりますか。
A. 条件付きです。対象はマイナ免許証のみを持っている人で、事前に警察で住所変更ワンストップサービスの利用開始手続きを行い、有効な署名用電子証明書を提出しておく必要があります。従来の免許証と2枚持ちの人は対象外です。また、これで届出が不要になるのは住所・氏名・生年月日で、本籍は別の措置が必要です。
Q. 住所変更をしないと、点数は引かれますか。
A. 引かれません。住所変更の届出を怠ったこと自体に、違反点数は設定されていません。ただし2万円以下の罰金または科料の対象であることは変わりません。
Q. 住所変更をすると、新しい免許証がもらえますか。
A. 通常の記載事項変更では、いまの免許証の裏面に変更事項が追記されて返却されます。表面に新しい住所を表示したい場合は、別に再交付を申請できます(道路交通法94条2項)。こちらは手数料がかかります。
根拠法令・出典
- 道路交通法93条(免許証の記載事項)、93条の2(免許証の電磁的方法による記録)、94条1項(免許証の記載事項の変更届出等)、95条の5(免許情報記録個人番号カードのみを有する者の特則)、121条1項10号
- 道路交通法施行規則19条(免許証の記載事項等)、19条の2(免許証の電磁的方法による記録)、20条(免許証の記載事項の変更の届出の手続)、21条の12、21条の13、21条の14
- 住民基本台帳法22条(転入届)、23条(転居届)、24条(転出届)、52条2項
- 戸籍法120条の3
- 警視庁「記載事項変更(住所、氏名、本籍(国籍等)の変更の方)」(2026年4月15日更新) https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/koshin/kisai00.html
- 警視庁「令和7年10月1日施行・改正道路交通法施行規則について」(2026年4月24日更新) https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/oshirase/low.html
- 神奈川県警察「運転免許証の記載事項変更手続について」(2025年12月1日更新) https://www.police.pref.kanagawa.jp/tetsuzuki/menkyo/mes83004.html
※手続きの取扱いや受付時間は都道府県および制度改正によって変わります。手続きの前に、住所地の都道府県警察のページで最新の内容を確認してください。
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な解説です。個別の手続きの可否については、住所地の警察・運転免許センターにご確認ください。
