道路交通法(総合)

車検切れで運転するとどうなる?罰則・違反点数と、気づいた後の対処法

ある日ふと気づいたら、車検の有効期間が先月で切れていた——。「車検切れ」は、だらしない人だけの話ではありません。案内ハガキの見落とし、引っ越しで通知が届かない、家族の車で誰も管理していなかった。きっかけはささいなことで、国土交通省が2016年度に全国5地点の主要道路で行ったナンバー読取調査では、捕捉した38万9,668台のうち1,083台、0.27%が無車検でした。特定の地点・期間で行われた調査であり現在の全国割合を示す数字ではありませんが、決して他人事の話ではありません。

問題は、車検切れの車で公道を走ると何が起きるかです。反則金を払って終わる「青切符」の違反とは、扱いがまったく違います。この記事では、罰則の正確な中身と、気づいたときの正しい動き方を整理します。

結論:罰則の全体像

車検切れ(無車検運行)と自賠責切れ(無保険運行)は、根拠となる法律が別々の、それぞれ独立した違反です。

状態根拠刑事罰違反点数
車検切れのみ(無車検運行)道路運送車両法58条1項・108条1号6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金6点
自賠責切れのみ(無保険運行)自動車損害賠償保障法5条・86条の3第1号1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金6点
同じ一回の運転で両方成立観念的競合(刑法54条1項)原則、重い無保険運行の刑(1年以下・50万円以下)で処断6点(後述)

車検と自賠責がともに切れた車を一回の運転で運転した場合、無車検運行と無保険運行の両方の罪が成立します。ただし、刑罰を単純に足し合わせるわけではありません。裁判例では、一個の運転行為が複数の罪名に触れる「観念的競合」として、最も重い無保険運行の刑で処断されています。この場合の上限は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。観念的競合とは、軽い方の罪が成立しなくなる制度ではなく、成立した複数の罪を、刑の決め方の上では一罪として扱う仕組みです。

なお、「両方切れて運転すると1年6月以下の拘禁刑または80万円以下の罰金」と解説しているサイトが少なくありませんが、これは無車検運行と無保険運行を単純に併合罪として計算した数字です。同じ一回の運転行為には当てはまりません。複数回の運転や別の違反行為がある場合の罪数・処断刑は、行為どうしの関係によって個別に判断されます。

この記事で扱うのは「車検が切れた車を公道で運転した場合」です。公道や一般交通に利用される場所を運行せず、自宅の車庫などに保管しておくだけなら、無車検運行には当たりません。

反則金で済む青切符の違反と、裁判所で扱われる刑事事件の違反を左右で対比した図

「反則金を払って終わり」にはならない

スピード違反や駐車違反の多くは、交通反則通告制度の対象です。反則金を納付すれば刑事裁判にはならない、いわゆる「青切符」の世界です。

無車検運行と無保険運行は、この反則通告制度による反則金処理の対象ではありません。つまり反則金という選択肢がそもそも存在せず、刑事事件として捜査・処分の対象になります。その後、不起訴、略式命令による罰金、正式裁判など、どの処分になるかは、期限切れの認識の有無、運転の回数、期限切れの期間、事故の有無、前科・違反歴などによって異なります。罰金刑を含む有罪処分が確定すれば、前科として扱われます。

「車検切れの反則金はいくら?」という検索が多くありますが、答えは「反則金という枠組みの外にある違反」です。

「本当に知らなかった」場合はどうなるのか

うっかり車検切れで検索した人にとって、一番気になるのはここだと思います。

刑法は原則として「罪を犯す意思がない行為は罰しない」と定めています(刑法38条1項)。このため、無車検運行については、車検が切れていることを認識していたかが問題になります。無保険運行についても、自賠責が有効でないことの認識が問題になり得ます。車検切れを知っていたからといって、当然に自賠責切れまで認識していたことになるわけではありません。本当に気づいていなかった場合、運転した事実だけで直ちに有罪になるとは限りません。

ただし、「知らなかった」と主張すれば済むわけではありません。更新案内の通知、車両の管理状況、期限切れからの経過期間、過去の整備記録などから、個別に判断されます。そして重要なのは、少なくとも車検切れに気づいた後の運転については、無車検運行に関して「知らなかった」とはいえないということです。自賠責も、証明書を確認して期限切れだと分かった後は同じです。気づいた瞬間から、その車で公道を走る選択肢は消える——これがこの記事の一番の実務的な結論です。

同じ重さの重り2つを載せた天秤。積み上げた高さは点線で示され採用されないことを表す図

違反点数は6点——「12点で90日免停」は誤り

行政処分(点数)の話に移ります。ここも誤情報が非常に多いポイントです。

無車検運行も無保険運行も、違反点数はそれぞれ6点です。では両方同時なら12点かというと、そうはなりません。道路交通法施行令の別表第二の備考に、同時に2つ以上の違反行為をした場合は、そのうち最も高い点数のみを付するという趣旨の定めがあるためです。したがって、車検と自賠責が両方切れた車を運転した場合でも、付される点数は6点です。

処分前歴がない場合、6点は免許停止処分(30日)の基準に達します。「12点だから90日免停」と書いている解説サイトが少なくありませんが、同時違反の基礎点数の扱いとしては正確ではありません。

※以上は、過去の累積点数や処分前歴がなく、人身事故などの付加点数、酒気帯びその他の違反がない場合を前提としています。事故を起こした場合は付加点数が加わり、前歴があれば停止期間も変わります。

車検と自賠責の有効期間を2本の帯で比べ、終わる位置がずれていることを示す図

車検切れ=自賠責も切れている、とは限らない

「車検が切れていたなら自賠責も切れているはず」と思われがちですが、車検の満了日と自賠責の満了日は、必ずしも同じではありません。

自賠責は車検期間全体をカバーするように契約され、手続の時期や既存契約の残存期間によって、24ヶ月・25ヶ月など契約期間が異なります。このため、車検が切れた直後でも、自賠責だけはまだ有効な場合があります。ただし必ず残っているわけではないため、車検証と自賠責保険証明書を別々に確認してください。

確認のときに注意が一つあります。車検証は電子化されており(登録車は2023年1月4日から、検査対象軽自動車は2024年1月4日から)、電子車検証の券面には有効期間の満了日が記載されていません。満了日は、国土交通省の車検証閲覧アプリまたは交付時に渡される「自動車検査証記録事項」で確認します。フロントガラスの検査標章(ステッカー)では満了年月を確認でき、2023年7月3日からは貼付位置が原則「前方かつ運転者席から見やすい位置」(一般的には運転席側上部)に変更されています。まずは運転席からステッカーを見る習慣が、うっかり車検切れの一番の防止策です。

車検切れは、どうやって発覚するのか

「バレなければ大丈夫」と考える人がいるかもしれないので、取締りの現状に触れておきます。

国土交通省と警察は、街頭検査や交通検問で可搬式のナンバー自動読取装置を使用しています。読み取ったナンバーを国の登録検査システムの無車検車情報と照合し、無車検車を捕捉する取組です。また、車検が切れたまま抹消登録もされていない車の使用者には、注意喚起のハガキが送付される運用も行われています。

ナンバーから機械的に照合される以上、「見た目ではわからないから」という発想は通用しないと考えるべきです。

車庫と車検場の間の水路に、赤い斜線入りの仮ナンバーが橋として架かっている比喩の図

気づいたら、仮ナンバーなしで絶対に自走しない

車検切れに気づいたとき、一番やってはいけないのが「車検を受けに行くために、そのまま運転する」ことです。目的が車検であっても、公道を走れば無車検運行が成立します。前述のとおり、気づいた後の運転は「知らなかった」も成り立ちません。一般的な対処は、仮ナンバーを取得するか、積載車・専門業者に運搬を依頼する方法です。

① 仮ナンバー(臨時運行許可)を取る

市区町村の窓口で臨時運行許可を申請すると、赤い斜線の入った仮ナンバーを借りられます。手数料は自治体によって異なります(例: 相模原市は750円)。許可されるのは、車検・登録などの目的、必要な運行経路、必要最小限の期間に限られ、上限は5日です。申請には、車両を確認できる書類(車検証など)、本人確認書類(運転免許証など)、予定する運行期間をカバーする自賠責保険証明書などが必要です。必要書類の詳細は申請先の自治体に確認してください。なお自賠責の保険期間は満了日の正午までなので、自治体によっては満了日当日を運行期間にできない場合があります。

ここで前の話がつながります。仮ナンバーは有効な自賠責が前提なので、自賠責も切れている場合は、先に自賠責保険を契約してから申請することになります。自賠責は保険会社の窓口などで、車検切れの車でも契約できます。

② 積載車・専門業者に運んでもらう

自分で運転せず、業者の積載車(キャリアカー)で車検場や整備工場まで運んでもらう方法です。費用はかかりますが、仮ナンバーを自分で申請する必要がなく、車両を公道上で自走させずに運べます。なお、ロープによる自己けん引は、けん引方法や被けん引車の状態について道路交通法上の要件があり、事故の危険も高いため、自己判断は避けてください。運ぶなら「載せる」が確実です。

巨大な硬貨の塊を背負って坂を上る人物。遠くに公的機関の建物と傘があり、救済と負担が別であることを示す図

事故を起こしたときが、本当の地獄

罰則よりも重い話をします。自賠責切れの状態で人身事故を起こした場合です。

自賠責保険は、被害者救済のための強制保険です。これが切れた車の事故では、被害者は「政府保障事業」という国の制度に請求できる場合があります。政府保障事業は、自賠責の支払基準に準じた法定限度額の範囲で、健康保険・労災などの給付や加害者からの支払いを差し引いた残額をてん補する、最終的な救済制度です。被害者の損害が自動的に全額補償される制度ではありません。

問題は加害者側です。政府が被害者に支払った場合、その支払額を限度として、国が加害者などの損害賠償責任者に求償します。つまり、保険なら保険料で賄われたはずの賠償金を、自分の財布から国に支払うことになります。

「任意保険に入っているから大丈夫」とも言い切れません。任意保険の対人賠償では、補償対象を「自賠責保険等により支払われるべき金額を超える部分」としている契約があります。そのため、任意保険に加入していても、自賠責未加入分まで当然に補償されるとは限りません。具体的な扱いは契約約款と保険会社への確認が必要ですが、「任意保険があるから自賠責切れでも実害はない」という理解は危険です。

死亡事故では、自賠責の支払限度額は被害者1人につき最高3,000万円です。無保険の場合、この自賠責相当額も加害者側の負担になり得ます。保険で賄われるはずだった金額が、そのまま自分の負債になる——これが「自賠責切れが本当の地獄」と言われる理由です。

相手が無保険だったら——被害者側の視点

このサイトの読者には、逆の立場も知っておいてほしいと思います。事故の相手の自賠責が切れていた場合、被害者は先ほどの政府保障事業を利用できる可能性があります。

また、相手が自賠責には入っていても任意保険に入っていないケースは珍しくなく、当サイトでも任意保険の未加入率について別の記事で扱っています。もらい事故への備えとして、自分の保険の無保険車傷害特約や人身傷害保険を確認しておくことは、相手を選べない事故への現実的な防御になります。

まとめ

  • 車検切れの運転は反則金の対象外。無車検運行として6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になり、刑事事件として扱われる
  • 自賠責も切れていた場合、同じ一回の運転では観念的競合として重い無保険運行の刑(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)が上限。「1年6月・80万円」は両罪を単純に併合罪として計算した数字で、同じ一回の運転には当てはまらない
  • 違反点数は6点(同時違反は最も高い点数のみ。「12点で90日免停」は誤り)。前歴なしでも免許停止(30日)の基準に達する
  • 本当に期限切れを知らなかった場合、直ちに有罪になるとは限らないが、個別判断。車検切れを知った後に運転すれば、少なくとも無車検運行について「知らなかった」とはいえない
  • 車検切れ=自賠責切れとは限らない。車検証と自賠責保険証明書を別々に確認
  • 電子車検証の券面に満了日はない。検査標章で満了年月を、正確な満了日は閲覧アプリか自動車検査証記録事項
  • 気づいたら仮ナンバーなしで自走しない。仮ナンバー(要・有効な自賠責、手数料は自治体による、最長5日)か積載車で
  • 自賠責切れの人身事故は、政府保障事業のてん補額を国から求償される。任意保険でも自賠責分は補償されない場合がある

なお、2025年4月1日からは、車検満了日の2ヶ月前に受検しても次回の車検期間が短くならない運用になっています。ギリギリに予約が取れずに切らしてしまう事態を避けるためにも、早めの予約が確実です。検査標章の満了年月をいま確認して、カレンダーに入れておく——それがこの記事の一番簡単な実践です。


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出典

オトロン

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