「あおり運転をするのは、一部の“やばい人”だけ」——そう思っていませんか。
ところが、海外の大規模な調査は、それとはかなり違う数字を示しています。アメリカの交通安全研究機関が2025年に発表した調査では、ドライバーのほぼ全員が、何らかの“攻撃的な運転”を認めたのです。
この記事では、その調査の数字をわかりやすく紹介しながら、「攻撃的な運転は本当に特別な人の問題なのか?」を考えます。日本とアメリカは事情が違いますが、数字で見ると、攻撃的な運転がどれだけ身近な問題なのかが、少し見えてきます。
⏱ この記事の要点(30秒) – 米・大規模調査で、96%のドライバーが過去1年に何らかの攻撃的運転を認めた – うち92%は「速度超過・割り込み」など、他人を危険にさらす行為 – 一方で、車を降りて詰め寄る等の“暴力的”な行為は11%——多くは日常的な“ついやってしまう”運転 – 調査は「攻撃的運転は“伝染”する」とも指摘。周りが荒いと、自分も荒くなりやすい – ※これはアメリカの自己申告データ。日本にそのまま当てはまるわけではない
そもそも、どんな調査なのか
今回紹介するのは、アメリカのAAA交通安全財団(AAA Foundation for Traffic Safety)が2025年に発表した調査です。
- 対象:全米を代表するように選ばれた 3,020人のドライバー(16歳以上)
- 方法:過去1年間の運転をふり返ってもらうアンケート(自己申告)
- 位置づけ:同財団が毎年行っている「交通安全に関する意識調査」の一部
ポイントは、「自分がやったこと」を本人に答えてもらっているという点です。だからこそ、「本当は自分もやっている」という実態が見えやすい調査になっています。
衝撃の数字:96%が「攻撃的運転」を認めた
この調査で最も注目されたのが、次の数字です。
回答したドライバーの96%が、過去1年間に何らかの“攻撃的な運転”をしたと認めた。
ただし、ここでいう「攻撃的運転」は、速度超過や割り込みなどを含む“広い言葉”です。日本でいう「悪質なあおり運転」を96%がした、という意味ではありません。ここはとても大事なので、先に押さえておいてください。
ほぼ全員です。「攻撃的な運転」と聞くと、怒鳴ったり、幅寄せしたりする激しい場面を想像しがちですが、この調査ではもっと幅広い行為を含んでいます。
- スピードの出しすぎ
- 前の車に近づきすぎる(車間を詰める)
- ほかの車の前に割り込む
- 怒ってクラクションを鳴らす
- 赤信号になりそうな交差点を無理に通過する
こうして並べると、「自分は絶対にやらない」と言い切れる人は、そう多くないはずです。攻撃的運転は、特別な誰かではなく、“普通のドライバーの延長線上”にある——この調査は、その事実を数字で突きつけています。

これは、以前の記事あおり運転は「普通の人」にも起きる?で紹介した「危険運転はグラデーション」という考え方とも一致します。
“危険な行為”と“暴力的な行為”は分けて考える
ただし、ここで大事なのは、「攻撃的運転」の中身には濃淡があるということです。同じ調査では、次のように分かれていました。
- 約92%:速度超過・割り込みなど、他者の安全を脅かしうる行為
- 約11%:より“暴力的”な行為(故意に車をぶつける、車を降りて相手に詰め寄る など)
つまり、「ついやってしまう危険な運転」は非常に多い一方で、明確な“攻撃”にまでエスカレートする人は限られている、という構図です。
ニュースになるような激しい事案には、この11%に近い“暴力的な行為”を含むものもあります。でも、その手前には「92%の、日常的だけど危険な運転」という分厚い土台がある。ここを見落とすと、「あおり運転は一部の異常者の問題」という誤解から抜け出せません。

10年前と比べて、増えた行為・減った行為
この調査は、2016年に行われた同じような調査と比較できるようになっています。約10年でどう変わったか——傾向を見てみましょう。
増えた行為
- ほかの車の前への割り込み:大きく増加
- 怒ってクラクションを鳴らす:増加
減った行為
- 車間を詰める(あおり):減少
- ほかのドライバーに怒鳴る:減少
「怒鳴る・詰める」といった直接ぶつける形の怒りはやや減り、「割り込む・クラクションを鳴らす」といった手早い自己主張が増えている——大まかには、そんな変化が読み取れます。

ここからは、この結果と、これまでの記事の内容をふまえた筆者の整理です。
直接的な怒鳴り合いが減り、割り込みやクラクションが増えているのは、車という空間の“匿名性”という観点からも説明できるかもしれません。顔を合わせずに済むぶん、手早い自己主張は出やすい。この点は車に乗ると性格が変わる理由で扱ったテーマとつながります。
見逃せない発見:「攻撃的運転は“伝染”する」
今回の調査で、もう一つ重要な指摘がありました。それは——
攻撃的な運転は“伝染”する。
つまり、攻撃的な運転にさらされた人ほど、自分も攻撃的な行動をしやすい傾向がある、という意味です(因果を証明したものではなく、自己申告データにみられる関連として受け取ってください)。
前の車に煽られて、思わず自分もムッとしてスピードを上げる。割り込まれて、仕返しのように車間を詰める。——身に覚えのある人は多いはずです。攻撃的運転は、個人の性格の問題であると同時に、“場の空気”に流される問題でもあるのです。

これは裏を返せば、「自分が穏やかに運転すること」が、周りの攻撃性を下げる方向にも働きうるということでもあります。
数字が教えてくれる、現実的な対策
この調査の結論は、意外なほどシンプルでした。
良い運転マナーは、攻撃的運転をやわらげる有力な方法の一つだと示唆されています。
派手な取り締まりや罰則よりも、一人ひとりの小さな配慮が“伝染の連鎖”を止める、という考え方です。具体的には、こういう行動です。
- 合図(ウインカー)を早めに、しっかり出す:相手に予測させ、不意打ちを減らす
- 合流や車線変更を譲る:一台譲るだけで、後ろの空気が変わる
- 入れてもらったら、軽く会釈・お礼のサイン:敵意でなく好意のやりとりにする
- 煽られても、同じ土俵に乗らない:仕返しは“伝染”を広げるだけ
これらは、怒りを鎮めるコーピングの記事で紹介したセルフコントロールとも地続きです。自分の運転を穏やかに保つことは、自分の身を守るだけでなく、周りの攻撃性まで下げる——この調査は、そう示唆しています。

この数字を読むときの注意点
研究ベースの記事として、正直にお伝えします。
- これはアメリカの調査です。道路事情も運転文化も違う日本に、数字をそのまま当てはめることはできません。
- 自己申告のアンケートです。「自分はやった」と正直に答えた人の割合であり、実際の頻度や重さを正確に測ったものではありません。
- 「96%」という数字は、幅広い行為を“攻撃的運転”に含めた結果です。激しいあおり運転が96%という意味ではありません。
- 増減の比較も、調査方法の違いによる影響を完全には除けません。傾向として受け取るのが安全です。
それでも、「攻撃的な運転は、ごく一部の特別な人の話ではない」という大枠は、日本で運転する私たちにとっても、考える価値のある視点です。
まとめ
- 米・大規模調査(3,020人)で、96%が過去1年に何らかの攻撃的運転を認めた
- うち約92%は速度超過・割り込みなど「他人を危険にさらす行為」、約11%が車を降りて詰め寄る等の“暴力的”な行為
- 約10年で、割り込み・クラクションは増加、車間詰め・怒鳴りは減少の傾向
- 調査は「攻撃的運転は伝染する」と指摘。周りが荒いと自分も荒くなりやすい
- 対策は特別なことではなく、合図・譲り合い・会釈といった良いマナー。それが連鎖を止める
- ※アメリカの自己申告データであり、日本への単純な当てはめは禁物
あおり運転は、「あの人たち」の問題ではなく、「私たち」の運転のすぐ隣にある。だからこそ、自分の一手が、道路全体の空気を変えられるのかもしれません。
よくある質問
Q. 96%って、ほとんど全員があおり運転をしているということですか?
A. いいえ。ここでの「攻撃的運転」は、スピードの出しすぎや無理な割り込みなど、幅広い行為を含みます。ニュースになるような激しいあおり運転をした人は、そのごく一部(暴力的な行為は約11%)です。
Q. アメリカの調査なのに、日本の参考になりますか?
A. 数字をそのまま日本に当てはめることはできません。ただ、「攻撃的な運転は特別な人だけの問題ではない」「周りの荒さに影響される」という傾向は、運転する人間に共通する部分が大きいと考えられます。参考の一つとして受け取るのが適切です。
Q. 「伝染する」なら、自分が気をつけても意味がないのでは?
A. むしろ逆です。伝染するということは、あなたが穏やかに運転すれば、周りの攻撃性を下げる方向にも働きうるということ。譲り合いや会釈は、連鎖を止める小さな一手になります。
この記事の出典
- AAA Foundation for Traffic Safety. *Aggressive Driving and Road Rage* (2025). (攻撃的運転と路上の怒りに関する技術報告)
- AAA Foundation for Traffic Safety. *2025 Traffic Safety Culture Index*.
- AAA Newsroom (2025-09). “Study Finds Almost All Drivers Experience Road Rage, But It Can Be Stopped.”
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危険な運転を見かけた地域は、あおり運転データベース本体の地図ページでも確認できます。




