サイレンの音が近づくと、急にアクセルを緩めたり、あわてて端に寄ったりしてしまうドライバーは少なくありません。とはいえ、救急車が来たときの対応は道路交通法で明確に決められています。この記事では「どこに避ければ良い?」「信号待ち中は動いてOK?」「違反したらどうなる?」といった疑問を、一般ドライバー目線でかみ砕いて解説します。
目次
救急車に道を譲る義務とは?(道路交通法に基づく基本ルール)
救急車は「緊急自動車」に指定され、サイレンを鳴らし赤色灯を点灯しているときは最優先で通行する権利があります。道路交通法第40条には、ドライバーが守るべきポイントとして以下が明記されています。
- 救急車が接近したら、道路の左側に寄って進路を譲る義務がある
- 交差点では進入せず、すでに入っている場合は速やかに退避
- 救急車の通行を妨げる行為は禁止(違反点数1点・反則金6千円〜)
実際には「左に寄る」といっても、狭い道路や渋滞中だと咄嗟に判断が難しいものです。特に最近はドラレコで記録される場面も増え、無意識のミスでも「進路妨害」に当たる可能性があります。

正しい避け方・ケース別対応
① 一般道路で走行中の場合
基本は左側へ寄る。ただし無理に路肩へ突っ込む必要はなく、車線の中で少し左へ寄るだけでもOKです。後続車も同じ動きをするため、全体が滑らかに避けられます。
② 渋滞中・低速走行時
「動けないからどうしよう」と焦る必要はありません。車列を少しずつ左へ寄せるだけで救急車が通れるスキマができます。わずか数十センチの協力でも十分効果があります。
③ 交差点で信号待ち中
原則として動いてよいとされています。赤信号でも、救急車の進路を空けるために左へ移動するのは合法です。ただし、横断歩道の歩行者や対向車の動きには細心の注意が必要です。
④ 右折レーンや専用レーンにいる場合
右折方向へ抜けるのが困難なら、できる範囲で左に寄るだけでOK。右折待ち車両も少しずつ位置を調整することで十分通路が開けられます。
⑤ 高速道路で救急車が来た場合
高速道路は速度が高く危険度が段違いです。急ブレーキは絶対NGで、ハザードを少し点滅させながら緩やかに左に寄るのが安全です。

よくある誤解とNG行動
- ▼右側に避ける → 対向車線に救急車が入り、安全性が下がる
- ▼急停車 → 後続車の追突リスクが急増
- ▼Uターンや脇道へ急進入 → 救急車の進路をさらに複雑化
- ▼「救急車より自分が先に行けるだろう」と判断 → 最も多い妨害ケース
特に多い誤解が「赤信号中は動いてはいけない」。実際は、安全を確認したうえで進路確保のために動くのは許されるため、躊躇がかえって混乱を招くことがあります。

実際に起きた事例と危険性
2020年代に入り、SNSやニュースで「救急車の妨害」が取り上げられることが増えました。例えば、片側1車線の道路で右折車が交差点をふさぎ、救急車が2分以上足止めされた事例があります。運転手は妨害の意図がなくても、結果的に違反となりました。
また、渋滞中に左へ寄らず中央にとどまった車が原因で、救急車が10台以上の車列をかわすために蛇行する映像も話題になりました。「自分一人の判断」が全体の流れを止めてしまう典型例です。
救急車は「1分の遅れが生存率に影響する」と言われるほど迅速性が命。数字だけ見ると冷たく感じるかもしれませんが、その1分には誰かの家族の未来が乗っています。

まとめ
救急車が接近したら「左へ寄せる」「交差点では入らない」「妨げない」。この3つさえ守れば大きなトラブルは避けられます。焦らず、周囲とリズムを合わせるように動くのが最善の方法です。
筆者の体験談
昔、私が初心者ドライバーだった頃、夜の住宅街で突然サイレンが聞こえてきました。細い道で逃げ場がなく、心臓がドクンと跳ねたのを覚えています。とにかく左へ寄ったのですが、それだけで救急隊員が手を上げて「ありがとう」と合図してくれたんです。あれ以来、救急車が来ると少しでも力になりたいという気持ちが自然と湧きます。「ちょっと寄せるだけで助かる命がある」。運転を続ける中で、一番忘れないようにしていることです。
FAQ
Q1. 赤信号の停止線を越えて避けても違反にならない?
救急車の進路を確保する目的なら、慎重に動けば違反にはなりません。
Q2. サイレンが小さく聞こえただけでも避けるべき?
姿が見えなくても、方向が特定できるなら減速して周囲を確認しましょう。
Q3. バイクや自転車も避ける義務はある?
すべての車両に譲る義務があります。特に二輪は無理な回避が転倒の原因になるため慎重に。
【参考リンク】
・道路交通法第40条(進路の譲り方)






