心の乱れは運転にも影響する?煽り運転と「身体拡張」のリアル
休日だけ運転するペーパードライバーのリアル
~運転慣れしていない自分と向き合った日々~
「よし、今日は車で行ってみよう」。休日の朝、そう決心したはずなのに、玄関を出た瞬間から胃がキリキリする。これが、かつての自分だった。
免許は持っていた。でも、普段の通勤は電車。運転なんて年に数回、たまの旅行か、荷物の多い日曜の買い物くらいだった。完全に“ペーパードライバー”の典型。それでも「運転できないわけじゃない」と、どこかでプライドだけは残っていた。
運転がぎこちない――自分で自分にイライラする
まず、発進からしてぎこちない。アクセルの踏み方が雑なのか、出だしでガクンと揺れる。後ろの車に煽られているような気がして焦り、信号でのブレーキも毎回強すぎる。
助手席に乗った家族が「ゆっくりでいいよ」と声をかけてくれる。それでも心の中では、「なんでこんなことで緊張してるんだよ、俺」と、自分に腹が立って仕方がなかった。
車幅感覚ゼロ――駐車が地獄
いちばんの難関は、コンビニやスーパーの駐車場だった。
駐車枠に入れる時、自分の車がどこにあるのかまったくわからない。サイドミラーをのぞいても、どのくらい寄っているのかピンと来ない。結果、何度も切り返し、何度もアクセルとブレーキを踏み替えて、やっとの思いで停める。後ろに車が並びはじめると、もうパニックに近い状態だ。
とくに狭い立体駐車場では、ミラーを折りたたんで、ほとんど息を止めて運転していた。「こんな思いするくらいなら、運転なんてやめた方がいいかも…」そう思う瞬間もあった。

少しずつ、慣れるしかなかった
ある日、意地になって練習しようと、わざわざ人気のない朝の時間帯に近くの広い公園へ向かった。目的はただ一つ、「駐車だけを何回もやる」こと。
10回、20回と入れ直すうちに、「あ、この角度だと入りやすい」と少しずつ感覚が掴めてくる。誰にも見られない場所で思い切り失敗できたのは、本当に大きかった。自分にとって、あれが“ペーパードライバー脱出”の第一歩だった。
運転できる人の態度に、ひねくれそうになる
ただ、苦手意識が少しずつ解消されていく一方で、モヤモヤする感情もあった。それは「運転が当たり前にできる人の無意識なマウント」だ。
「そんなの感覚でわかるでしょ」「慣れれば誰でもできるよ」――いや、わかってる。でも、その“慣れる”までが一番きついんだって。
できない怖さ、失敗の恥ずかしさ、周りの目の圧力。それを乗り越えるのは、想像以上にしんどい。
「運転できる」は技術だけじゃないと気づいた日
ある日、急に雨が降ってきて、ワイパーを操作しようとしてパニックになった。普段触らない機能に、いざという時ほど焦る。信号待ちで必死にレバーをカチカチ動かしていたら、後ろの車にクラクションを鳴らされた。
この時、改めて思った。「運転がうまい」って、ハンドルさばきや車庫入れのうまさだけじゃない。不測の事態でも落ち着いて判断できる「心の余裕」があるかどうか。それが一番大事なんだと。
焦った時ほど、周囲がよく見えなくなる。操作ミスも増えるし、判断も鈍る。事故のリスクが高まるのは、技術不足よりも「余裕不足」のせいだと痛感した。

それでも、運転は人生を広げてくれた
こんなに苦労して、それでも運転を続けている理由。それは、「できなかったことができるようになる」この達成感にあると思う。
初めて一人でショッピングモールに行けた日。夜の街中をスムーズに走れた日。狭い駐車場で一発で停められた日。どれも、誰かに自慢できるようなことじゃない。でも、自分にとってはめちゃくちゃ大きな勝利だった。
電車やバスでは行けない場所に、自分の運転で行けた。それだけで「自分ってちゃんと成長してる」と思えた。
ペーパードライバーだったからこそ言えること
今、自分と同じように休日だけ車を運転して「慣れない」「怖い」と思っている人がいたら、伝えたい。
あの不安や緊張、車幅感覚のなさ、ぎこちない動き――全部、通ってきた道だ。だからこそ言える。
それは「あなたが運転に向いていない」からじゃない。ただ、慣れるチャンスが少なかっただけだ。
「慣れる」って言葉は軽く聞こえるけど、実はすごく大事なプロセスだ。失敗しながらでも繰り返せば、確実にできるようになる。それだけは断言できる。
まとめ:運転下手を恥じなくていい
運転が下手だった頃の自分。ぎこちなくて、車幅感覚がなくて、駐車すらままならなかった自分。その頃の自分を、今は誇りに思う。
なぜなら、逃げなかったから。うまくいかなくても、恥をかいても、練習して、また乗って、少しずつ前に進んだから。
運転は、誰と比べるものでも、誰かに見せるものでもない。「自分がどう成長できたか」を見せてくれる鏡だと思う。
だから、ペーパードライバーで悩んでいる人にこそ、こう言いたい。
「焦らなくていい。あなたのペースでいい」
それでも前に進むその姿勢が、一番かっこいい。