バイクに乗る方なら一度は考えたことがある「すり抜け」。渋滞時に車列の横を走り抜ける行為は、時間短縮の大きな魅力があります。しかしその一方で「違反なのでは?」「危険だからやめるべき?」といった疑問や不安もつきまといます。本記事では、道路交通法に照らしたすり抜けの位置づけ、実際の取り締まり状況、安全上の問題点、そしてライダーが意識すべきポイントを詳しく解説します。
目次
道路交通法上のすり抜けの扱い
結論から言うと、日本の道路交通法には「すり抜け」という行為を直接禁止する条文は存在しません。ただし、すり抜けの際に他の交通規則に抵触する可能性が高いため、状況によっては違反行為として処理されることがあります。
すり抜けが関係しやすい道路交通法違反:
- 車線変更禁止違反(道路交通法第26条)
- 追い越し・追い抜きの方法違反(第28条)
- 安全運転義務違反(第70条)
- 通行区分違反(第17条)
- 路側帯通行違反(第17条の2)
このように、道路交通法は「すり抜け禁止」とは書いていないものの、実質的には複数の規定に触れる可能性があるため、常に合法とは言い切れないのです。
ケース別・すり抜けは違反?合法?
信号待ちでの停止車両の横をすり抜ける
信号で停車中の車列の横を通過する行為は、取り締まり対象になることがあります。特に左側からのすり抜けは「路側帯通行」や「左側追い越し」と判断されやすく、違反となる可能性が高いです。
渋滞中の車列の間を走る
車線の間を縫うように走る「フィルタリング」は、バイク特有の行為です。ただし接触事故のリスクが高く、警察から安全運転義務違反として検挙されるケースもあります。
右折待ち車両の右側を抜ける
右折待ちの車両を直進バイクが右から追い越すと、対向直進車と衝突するリスクが非常に高く、厳しく取り締まりの対象となります。
高速道路でのすり抜け
高速道路で渋滞している車列の間を走行する行為は、極めて危険とされ、通行区分違反や安全運転義務違反に問われる可能性が高いです。特に速度差が大きい場合は重大事故に直結します。
よくある誤解とグレーゾーン
ライダーの間で「すり抜けは黙認されているから大丈夫」という声を耳にしますが、これは誤解です。警察官の裁量や地域性によって取り締まりに差があるのは事実ですが、違反に問われる可能性は常にあります。
また「原付はすり抜けしても良い」という話もありますが、これも誤解です。原付にも同じ道路交通法が適用され、車列の横を通る行為は基本的に違反の可能性があります。
すり抜けによる事故リスクと事故事例
すり抜け中のバイク事故は後を絶ちません。代表的な事故事例には以下があります。
- 車がドアを開けた瞬間にバイクが衝突
- 車線変更してきた自動車と接触
- 交差点付近ですり抜けした際に右折車と衝突
これらの事故はライダーに大きな怪我を負わせることが多く、場合によっては過失割合がバイク側に大きく設定されることもあります。
安全に走るためのポイント
- すり抜けは「しない」のが最も安全
- やむを得ず行う場合は徐行し、車の動きを常に予測する
- 左側からのすり抜けは特に危険なので避ける
- 高速道路でのすり抜けは絶対に控える
- ドライバーに見えやすいポジションを心がける
まとめ
バイクのすり抜けは道路交通法で直接禁止されてはいませんが、多くのケースで他の条文に触れるため、違反とされるリスクが高い行為です。さらに事故のリスクも大きいため、基本的には避けるべき行為といえます。ライダー自身の安全と周囲の交通の円滑のためにも、「すり抜けしない」という選択を意識することが重要です。
筆者の体験談
私自身、若い頃は渋滞に巻き込まれるとついすり抜けをしてしまうことがありました。しかしある日、信号待ちですり抜けをした際に、突然ドアを開けた車に接触しそうになった経験があります。その時の恐怖から「ほんの数分を節約するために命を賭けるのは無意味だ」と痛感しました。現在ではすり抜けは行わず、渋滞も走行の一部として受け入れるようにしています。結果的に精神的にも安全面でも大きな安心につながっています。
FAQ
Q1. バイクのすり抜けは完全に違法ですか?
A1. すり抜け自体を直接禁止する法律はありませんが、多くの場合で他の規定に抵触し、違反になるリスクが高いです。
Q2. 警察はすり抜けを取り締まっていますか?
A2. 状況によります。黙認される場合もありますが、事故リスクが高い状況では取り締まり対象になります。
Q3. 原付もすり抜けは違反になりますか?
A3. はい。原付も道路交通法に従う必要があり、車列の横を通過する行為は違反の可能性があります。
Q4. 安全にすり抜けする方法はありますか?
A4. 絶対的に安全な方法はありません。どうしても行う場合は徐行し、周囲の車の動きを常に予測してください。